
はじめに
凍結融解胚移植と新鮮胚移植の周産期予後の差異については依然として議論があり、その原因が子宮内膜調整法の違いによるものなのか、ガラス化凍結・融解プロセスによるものなのかは明らかになっていません。今回、オーストラリアの多施設データを用いて、子宮内膜調整法別のサブグループ解析を含む大規模後方視的コホート研究をご紹介いたします。
ポイント
凍結融解胚移植は新鮮胚移植と比較して早産・低出生体重児・SGAリスクが低い一方、帝王切開・高出生体重児・LGAリスクが高く、この差異はホルモン調整周期・自然周期いずれでも一貫しており、子宮内膜調整法の違いでは説明できません。
引用文献
Zou H, et al. Hum Reprod Open. 2026;2026(1):hoag002. doi: 10.1093/hropen/hoag002.
論文内容
凍結融解胚移植と新鮮胚移植における周産期予後の差異、および子宮内膜調整法がその差異に寄与するかどうかを調査することを目的とした多施設後方視的コホート研究です。オーストラリアの2州にまたがるMonash IVFの12施設において、2015年4月から2021年9月に自己卵子によるIVF周期を開始し、単胎生児を得た8081名の女性から出生した9243児(凍結融解胚移植6125児、新鮮胚移植3118児)を対象とし、2023年8月までフォローアップしました。主要評価項目は早産(37週未満)、低出生体重児(LBW、2500g未満)、高出生体重児(HBW、4000g超)、SGA(在胎週数に対して10パーセンタイル未満)、LGA(在胎週数に対して90パーセンタイル超)、帝王切開としました。出生体重パーセンタイルは、医学的介入による出産を除外したNew Australian birthweight centilesに基づいて算出されました。統計解析にはロバスト分散を用いた多変量ポアソン回帰を使用し、同一患者の複数周期のクラスター効果にはGEEを適用しました。調整因子には女性年齢、経産回数、精子供給源、排卵障害、PGT-A、胚盤胞移植、移植受精胚数、施設を含めました。サブグループ解析として、凍結融解胚移植のホルモン調整周期(2069周期)および自然周期(3835周期)をそれぞれ新鮮胚移植と比較しました。
結果
新鮮胚移植と比較して、凍結融解胚移植は早産リスクが低く(8.9% vs 13.7%、aRR 0.66、95%CI 0.58–0.76)、LBWリスクが低く(5.3% vs 8.5%、aRR 0.66、95%CI 0.55–0.78)、SGAリスクが低い結果でした(4.2% vs 7.9%、aRR 0.62、95%CI 0.51–0.75)。一方で、帝王切開率は高く(57.5% vs 50.4%、aRR 1.14、95%CI 1.09–1.19)、HBWリスクが高く(10.1% vs 7.0%、aRR 1.43、95%CI 1.21–1.68)、LGAリスクも高い結果でした(20.0% vs 13.6%、aRR 1.37、95%CI 1.23–1.53)。
サブグループ解析では、ホルモン調整周期と自然周期のいずれにおいても、新鮮胚移植と比較して早産リスクの低下(ホルモン調整周期:aRR 0.75、95%CI 0.63–0.89、自然周期:aRR 0.59、95%CI 0.51–0.69)、LBWリスクの低下(ホルモン調整周期:aRR 0.77、95%CI 0.62–0.93、自然周期:aRR 0.59、95%CI 0.48–0.73)、SGAリスクの低下(ホルモン調整周期:aRR 0.72、95%CI 0.56–0.91、自然周期:aRR 0.56、95%CI 0.45–0.70)が認められました。同様に、帝王切開率(ホルモン調整周期:aRR 1.24、95%CI 1.19–1.30、自然周期:aRR 1.07、95%CI 1.02–1.12)、HBW(ホルモン調整周期:aRR 1.45、95%CI 1.20–1.75、自然周期:aRR 1.42、95%CI 1.19–1.70)、LGA(ホルモン調整周期:aRR 1.38、95%CI 1.22–1.57、自然周期:aRR 1.36、95%CI 1.21–1.54)はいずれも新鮮胚移植より高い結果でした。排卵障害のない患者に限定した感度分析でも、胚盤胞移植のみに限定した感度分析でも、結果は一貫していました。
私見
凍結融解胚移植における早産・LBW・SGAリスクの低下とHBW・LGAリスクの上昇という所見は、過去のメタアナリシスおよび大規模コホート研究と一致しています。
- Maheshwari A, et al. Hum Reprod Update. 2018;24:35-58.
メタアナリシスで凍結融解胚移植のSGA・早産リスク低下、LGAリスク上昇を報告 - Westvik-Johari K, et al. PLoS Med. 2021;18:e1003683.
北欧の同胞解析で凍結融解胚移植でのLGA率上昇を確認 - Raja EA, et al. Fertil Steril. 2022;118:323-334.
英国レジストリの同胞解析でも凍結融解胚移植でのLGA率上昇を確認
一方、同胞解析では異なる結果を示す報告もあります。
- Ganer Herman H, et al. Reprod Sci. 2022;29:1644-1650.
同胞解析でLGA率に差を認めず、対象集団の選択バイアスの影響が示唆される
ディスカッションでは、周産期予後の差異を生じうる要因として、①ガラス化凍結・融解プロセスの影響、②対象集団の違い(特にPCOS)、③子宮内膜調整法の違いが考察されています。
本研究は全施設でガラス化凍結のみを採用していました。PCOSについては、PCOS患者を除外した感度分析でも結果が一貫していました。サブグループ解析ではホルモン調整周期と自然周期の間で出生体重関連アウトカムに明確な差は認められませんでしたが、母体血管系アウトカムは黄体の有無と関連する可能性があり、今後の研究では黄体の存在を考慮した評価が重要であると著者らは指摘しています。
凍結融解胚移植リスクは大体フィックスしてきた感がありますね。ネガティブ部分だけ改善する方法があるのでしょうか。今後に期待です。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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