はじめに
二個胚移植の双子になる予測因子は何でしょうか。凍結融解胚では見つけられませんでしたが、新鮮胚の二個胚移植の二個着床リスクを示した論文がございましたのでご紹介いたします。
ポイント
胚盤胞移植では分割期胚移植よりも二個着床のリスクが高く、35歳以上では年齢とともにリスクが低下します。良好胚が多い環境(若年、多数採卵、良質受精胚)では二個着床の可能性が高まります。
引用文献
Caitlin Martinら. J Assist Reprod Genet. 2016 DOI: 10.1007/s10815-016-0770-9
論文内容
2000年から2012年までの米国ARTサーベイランスシステムのデータ(n = 1,793,067件の新鮮胚移植)を用いて、二個胚移植後の6週目の超音波検査で2回以上の心拍数が確認された二個着床を予測する因子を評価しました。予後で層別化し①良好予後期待群と③平均的予後期待群で調整後リスク比(aRR)を検討しました。
層別化は下記のとおりです。
①良好予後期待群
最初の体外受精で移植しても良好胚が1つ以上凍結できている女性
②予後不良群
過去に体外受精を受けたことがあり、出産したことがなく、凍結胚もない女性
③平均的予後期待群
二個胚移植を行った患者から①良好予後期待群と②予後不良群を除いた女性
結果
良好予後期待群(aRR = 1.58(1.51~1.65))と平均的予後期待群(aRR = 1.67(1.60~1.75))では、二個着床は胚盤胞移植(分割期胚移植)で最も著名に増加し、良好予後期待群・平均的予後期待群ともに年齢が35歳以上で低下しました。平均的予後期待群では、二個着床は10個以上の採卵で回収できた場合に増加しました(aRR = 1.22 (1.18-1.24))。
私見
この論文は、あくまでビッグデータの解析なので、細かい予測因子が出せたわけではありません。一貫しているのは良好胚が多い方が双子になりやすい(若くて、たくさん卵が取れて、よい受精胚が多くできる環境)ということだけです。当たり前に思えても継続妊娠率などはとても参考になります。今まで取り上げた論文の継続妊娠率とも大体一致していましたので取り上げさせていただきました。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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