一般不妊

2020.12.26

高齢女性(43歳以上)の人工授精(IUI)の成績は?( J Assist Reprod Genet. 2020)

はじめに

高齢女性が「人工授精・タイミングで妊娠しました!」という記事をSNSやネット記事などでよく見かけます。芸能名の記事だったり、サプリメントやクリニックの宣伝だったりと多岐にわたりますが、現実はどうなのでしょうか。43歳以上の人工授精成績にフォーカスを当てた論文をご紹介します。このようなネガティブデータもしっかり形にしていくことが必要だと改めて感じました。

ポイント

43歳以上の女性における人工授精の有効性は極めて限定的であり、卵巣刺激法やドナー精子の使用にかかわらず、妊娠率は1.5%、出生率は0.3%と低くなります。高齢女性に対する人工授精の適応は慎重に検討すべきとされています。

引用文献

Jacob Ruiter-Ligetiら. J Assist Reprod Genet. 2020. DOI: 10.1007/s10815-020-01976-3

論文内容

43歳以上の人工授精(IUI、AIH)の妊娠転帰を調査するため、2011年1月から2018年3月までの間に、単一生殖医療機関で43歳以上の女性を対象に後方視的コホート研究を行いました。主要項目は、人工授精の1周期あたりの妊娠数と出生数でした。フィッシャーの直接確率検定およびカイ二乗検定を実施しました。

結果

この施設で行った9,334周期の人工授精のなかで、325回の人工授精(3.5%)は、受精時年齢43歳以上の女性(43.6±0.8歳、範囲43~47歳)を対象としていました。これら325回の人工授精を分析したところ、生化学的妊娠は5回(1.5%)、生児出産は1回(0.3%)のみでした。ドナー精子を用いた人工授精(N=1/49、2.0%)とパートナー精子を用いた人工授精(N=4/276、1.4%)の間では、妊娠率に差はありませんでした。妊娠率は、ゴナドトロピン注射(N=2/211、0.9%)、クロミフェンまたはレトロゾール(N=2/78、2.6%)、自然周期(N=1/36、2.8%)を用いた人工授精間で差はみられませんでした。
43歳以上の女性における子宮内人工授精の使用は効果のない治療であり、これは卵巣刺激やドナー精子の使用とは無関係でした。

私見

今回の論文は比較的、臨床現場に即した論文だと思います。症例数が少ないのが残念ですが、日本で行うような卵巣刺激ですし、そこまで多数の排卵はさせていません。
Evans MBら(Obstet Gynecol. 2020)は40歳以上の女性でも排卵数を1~5個まで増やすと人工授精の妊娠率も4.1%~13.5%と上がると報告していますが、多胎のリスクを考えると治療手段として適当ではないと考えます。
現在までの高齢女性の人工授精の成績は下記のとおりです。

  • Haebe Jら. Fertil Steril. 2002
    43歳以上の女性24名については、出生率は1例のみ(40~42歳の女性89名の人工授精あたりの出生率は9.8%)。
  • Schorsch Mら. Geburtshilfe Frauenheilkd. 2013
    43歳以上の女性12名の人工授精あたりの妊娠率は8.3%、出産転帰は触れられず。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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# 総説、RCT、メタアナリシス

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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