体外受精

2021.02.25

調節卵巣刺激(卵巣刺激)の注射製剤の選び方 (ESHRE guideline 2025年版アップデート)

はじめに

患者様に卵巣刺激のために投与する注射はHMG製剤、r-FSH製剤など様々な種類がありますが、臨床結果に差があるのでしょうか。2025年11月にアップデートされたESHREによるガイドラインでは、「調節卵巣刺激の注射製剤にはほぼ差がない」という結論が維持されました。国内で販売されていない注射製剤も多々ありますので、日本で発売されているものを中心にガイドラインで触れられていた最新の内容を記載したいと思います。

ポイント

2025年版ESHREガイドラインでは、r-FSH製剤とhMG製剤は同等に推奨され(Strong推)、精製FSH(p-FSH)とr-FSHもGnRHアゴニスト法で同等に推奨されています(Strong)。

引用文献

ESHRE guideline: ovarian stimulation for IVF/ICSI (2025 update) Hum Reprod Open. 2025 DOI: 10.1093/hropen/hoaa076.

まとめ

①r-hFSH vs. HMG(2025年版アップデート)

r-hFSHおよびhMGの使用は、同等に推奨される(Strong )。
2025年版では、Bordewijk et al. 2019によるシステマティックレビュー・メタアナリシスが新たに引用されています。r-hFSHと高純度hMG(hp-hMG)を比較した結果、累積出生率に有意差は認められませんでした(RR 0.91、95% CI 0.80-1.04、3 RCT、2109名)。しかし、出生率(RR 0.88、95% CI 0.78-0.99、7 RCT、3397名)および臨床妊娠率(RR 0.90、95% CI 0.81-1.00、7 RCT、3397名)ではr-hFSH群がhp-hMG群と比較してわずかに低い結果が示されました。
メタアナリシスに含まれていない160名を対象としたRCT(Parsanezhad et al. 2017)では、GnRHアゴニストプロトコルにおいてhMGとr-hFSHの出生率に有意差は認められませんでした(27.5%(11/40) vs. 40%(16/40))。

②r-hFSH vs. 精製型FSH(p-FSH)(2019年から変更なし)

GnRHアゴニストプロトコルにおける卵巣刺激のためのr-hFSH)およびp-FSHの使用は、同等に推奨される(Strong)。
Cochraneのシステマティックレビュー・メタアナリシスでは、GnRHアゴニストによる下垂体抑制下において、r-hFSHはp-FSHと比較して出生率の向上と関連しませんでした(5 RCT、OR 1.26、95% CI 0.96-1.64、1430名)。OHSS率においてもr-hFSHとp-FSH間で有意差は報告されていません(6 RCT、OR 1.79、95%CI 0.89~3.62、1490名)。

③高純度FSH(hp-FSH)vs. HMG(2019年から変更なし)

GnRHアゴニスト法におけるhp-FSHとhMGの使用は、同等に推奨される(Conditional )。

④レトロゾール併用の評価

レトロゾールは、反応不良者のゴナドトロピンの代用品としてはおそらく推奨されない。
70名、20名および50名の女性を含む3つのRCTで、レトロゾール・ゴナドトロピン併用療法が検討されました。EbrahimiらとVerpoestらは、レトロゾール・ゴナドトロピン併用療法による臨床妊娠率はレトロゾールなし群と比較して差がないことを報告しています(14.3%(5/35)対11.3%(4/35)、50%(5/10)対20%(2/10))。

⑤クロミフェン併用の評価

卵巣刺激でクエン酸クロミフェンによるFSHの代用を推奨するエビデンスはありません。調節卵巣刺激のためにクエン酸クロミフェンをゴナドトロピンに添加することの有益性を調査している研究はありません。Low responderではクロミフェンのadd-onは評価されています。

私見

2025年版ガイドラインでは、2019年版と比較していくつかの重要な更新がありました。特に注目すべきは、r-hFSHとhMGの比較において、新しいメタアナリシス(Bordewijk et al. 2019)が引用され、累積出生率では差がないものの、単回胚移植当たりの出生率ではhMGが若干優位である可能性が示されたことです。

この結果は、2019年版で引用されていたvan Wely et al. 2011のCochraneメタアナリシスの結果と一致しており、hMGがr-FSHに比べてわずかに高い有効性を示す可能性を支持しています。しかし、ESHREガイドライン委員会は依然として両者を同等に推奨しており、臨床的に有意な差とは考えていないことが示されています。

過去の論文は新鮮胚移植ありきの出生率とOHSS発症率に焦点を当てた内容が多いため、現在の体外受精の本流(全胚凍結が大部分を占めるPPOS(Progestin Primed Ovarian Stimulation)を含めた体外受精治療)とは少し考え方が変わってきている気もします。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# OHSS

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# 卵巣予備能、AMH

# 総説、RCT、メタアナリシス

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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