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2021.04.01

自宅採精と院内採精で処理までの時間を統一したら違いはあるの?( Andrologia. 2020) 

はじめに

WHOの検査マニュアルでは、自宅採取した精液は1時間以内に培養室に届けて処理し、その間は20~40℃に保つこととされています。たしかに時間が経つと酸化ストレスや環境変化から精子の運動性の低下や総運動精子数の減少が起こるとされています。では、精子が悪くなる採精からの時間を統一したら自宅採精と院内採精で何か差があるのでしょうか。 

ポイント

自宅採精と院内採精では、採精から処理までの時間を1時間以内に統一した場合、精液所見や精子DNA損傷に差はありませんが、満足度は自宅採精の方が高くなりました。ただし、満足度と精液の質には相関がりませんでした。 

引用文献

Jin Gao, et al. Andrologia. 2020. DOI: 10.1111/and.13628

論文内容

自宅採精と院内採精の間で、従来の精液所見、精子DNAフラグメンテーションレベル、および採精満足度を比較することとしました。1年以上の不妊歴のある男性110名を対象とした無作為化臨床試験です。自宅採精群(n=55)と院内採精群(n=55)に無作為に割り付けました。精子は初回禁欲期間7日以内で自宅採精と院内採精をランダムに振り分けました。同じ男性に2~7日あけて2回目の採精を初回と異なる環境で実施してもらっています。自宅採精と院内採精ともに1時間程度で助手に受け渡し、精子処理までの時間は統一しました。

結果

精子濃度、精子DNAフラグメンテーションレベル(TUNELアッセイ、300 sperm)、その他の精液所見については、自宅採精群と院内採精群との間に有意な差はありませんでした(p>0.05)。しかし、満足度(リラックス度、性的興奮レベル、勃起時の硬さ、オーガズムの強さ、オーガズムの得られやすさ、オーガズム後の満足度)は自宅採精群が有意に高くなりました(p<0.01)。また、自宅採精群と院内採精群を同じ患者にとってもらい比較をしても、一貫した結果が得られました。 
院内採精が困難な男性に対して、精液所見を悪化させることなく検査や生殖補助のための選択肢として提供できることがわかりました。

私見

不妊男性の従来の精液所見、精子DNAフラグメンテーションレベルは、自宅採精と院内採精で同等でした。しかし、自宅採精の方が満足度は高かったようです。ただし、主観的な満足度は精液の質やDNAフラグメンテーションレベルとは相関しませんでした。 
自宅のほうがリラックスして採精できるから、時間厳守して持ってきたら全然気にする必要がないよという論文です。ただ、患者様は採精後1時間以内にもってこられる方はほとんどいないので、少し臨床の現場にはそぐわない条件ではありますね。また不妊期間1年とかいてありますが、実際、どのような不妊治療を行っている患者様なのかはわかりません。参加男性も31~33歳であり精液所見も正常、精子DNAフラグメンテーションレベルは16%前後なので、シビアな精液所見の場合どうなるかは興味があるところです。 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 精子DNA損傷検査

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# 精液所見

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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