はじめに
出産歴のある不妊女性におけるTh1/Th2比のカットオフ値は10.3と定義されていましたが、妊娠可能な女性のTh細胞レベルおよびTh1/Th2比の正常範囲は報告されていませんでした。また、Th1/Th2比が高い反復着床不全患者および反復流産女性に対しては、免疫療法が治療効果を発揮することが期待されていますが、一般不妊女性におけるTh1/Th2比が高い場合の出生予後には不明な点があります。
免疫療法を受けていない一般不妊女性、複数回の着床不全または反復流産女性を対象にTh細胞レベル、Th1/Th2比、体外受精治療後の出生率との関係を評価した論文をご紹介します。
ポイント
高いTh1/Th2比は、4回以上の反復着床不全患者と2回以上の反復流産患者に関連していましたが、一般不妊には関連していませんでした。
引用文献
Keiji Kuroda, et al. Am J Reprod Immunol. 2021. DOI: 10.1111/aji.13429
論文内容
2017年4月から2018年12月まで3回以上の胚移植における着床不全(RIF)および/または2回以上の反復流産の病歴を持つ197名の患者(44歳以上の女性42名とビタミンDを補充している9名を除外)のうち、反復着床不全患者79名と反復流産81名(14名が反復着床不全と反復流産の両方の既往がありました)。体外受精治療なく分娩可能な女性45名と一般不妊女性40名を対象としました。
結果
IFN-γ産生Th1細胞およびIL-4産生Th2細胞レベルは、不妊女性と一般不妊女性との間に有意な差はありませんでしたが、胚移植周期4回以上の反復着床不全、反復流産2回以上の女性では、Th1細胞レベルおよびTh1/Th2細胞比が、妊娠可能女性および一般不妊女性よりも有意に高くなっていました。
一般不妊女性では、Th1/Th2比の正常群と高い群(Th1/Th2比11.8をカットオフ)で胚移植2回後の自然妊娠を含む総出生率は、66.7%と87.5%でした(p=0.395)。
要点
– 妊娠可能な女性では、Th1細胞レベル、Th2細胞レベル、およびTh1/Th2比の平均値は、それぞれ19.6±6.2、2.7±1.1、および8.2±3.5、interval reference(平均値±2SD)は、それぞれ7.1〜32.0、0.5〜4.9、1.0〜15.3でした。
– 以前の報告では、着床不全経験のある不妊女性の免疫療法の対象となるTh1/Th2比は、出産歴のある不妊女性の平均Th1/Th2比+1SDとして算出されていて、10.3がカットオフ値でした。
– 今回のデータではTh1/Th2比が11.8(平均+1SD)で着床不全、反復流産の治療対象と考えられました。(2SDでみると15.3)
– Th1/Th2比が高い(11.8以上、平均+1SD)女性は8名のうち、7名(87.5%)の女性は、免疫療法を行わずに妊娠・出産していました。
私見
反復着床不全・不育症での血清Th1/Th2比に対する先進医療評価、そして、その上での治療方針、世界の動向について今後も注視していきたいと思います。
反復着床不全・反復流産におけるタクロリムス治療の周産期予後(Am J Reprod Immunol. 2019)
文責:川井清考(WFC group CEO)
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