男性不妊

2022.01.06

カンジダ腟炎は精子をダメにする(Int J Androl. 2007)

はじめに

カンジダ腟炎の原因菌であるCandida albicansが精子の運動性を阻害する作用は、in vitro研究で1977年にTuttleらによって報告されています。その後、Candida albicansが体外受精における卵子への受精を阻害し、精子のDNA断片化を増加させることが、Burrelloら(2004年)によって報告されています。定期的に精子への影響に触れた論文は報告されており、事実で間違いなさそうなのですが、その中では精子の運動能が速やかに低下し、形態変化も起こすと書かれていました。「速やか」がどの程度の時間なのか、「形態変化」がどのような変化なのかを調べていくと、この論文に到達しました。C. albicansとその濾液(C. albicans本体ではなく、自身が作り出す産生物による影響をみるため)が精子の運動性に及ぼす影響をCASAを用いて評価するとともに、超微細構造の変化や精子の接着を光学顕微鏡と透過型電子顕微鏡で評価した報告です。

ポイント

カンジダ腟炎の原因菌であるCandida albicansは精子の運動性を速やかに低下させ、先体や頭部を中心とした超微細構造に著しい障害を及ぼします。培養直後から精子への影響が認められるため、夫婦生活を持つ場合は治療が推奨されます。

引用文献

Yong-Hong Tian, et al. Int J Androl. 2007. DOI: 10.1111/j.1365-2605.2006.00734.x

論文内容

健康な男性から採取したヒト精子の運動性と超微細構造に対するCandida albicansとその濾液のin vitroでの影響を調べました。精子はCandida albicans周囲に付着し、精子の運動性が著しく低下しました。精子膜構造の変化の兆候がすぐに観察されました。

①光学顕微鏡
Candida albicansの(仮性)菌糸へ精子が付着していくのが顕著でした。

②透過型電子顕微鏡
Candida albicansおよび濾液と一緒に4時間培養した精子の観察では、複数の超微細構造の病変を認めました。部位の変化はCandida albicans本体、濾液、コントロール群で以下のとおりで、頭部に著明に現れました(先体:90.31% vs. 82.96% vs. 13.74%; 頭部40.43% vs. 38.52% vs. 14.16%、中間部:77.73% vs. 72.04% vs. 16.58%、尾部28.02% vs. 26.11% vs. 4.56%)。

頭部(先体以外): 細胞膜の破裂と精子核の空胞化の増加
先体: 腫脹、破裂、剥離、先体下の空隙の拡大
ミトコンドリア: 腫脹、配列の変化、低密度など
尾部: 形態変化に加えカール様変化

③運動性
Candida albicans群では培養直後(0時間、p < 0.05)に精子の運動性に有意な影響を与えました。濾液群でも2および4時間後には運動性に低下を認めました。直線速度と曲線速度でもCandida albicans群では培養直後から、濾液群では4時間後には低下を認めました。

私見

夫婦生活を持つ場合、カンジダ腟炎は治療することをお勧めいたします。また男性は女性に比べ感染しにくいといわれていますが、カンジダ性の亀頭周囲炎(亀頭や陰茎の周囲に白いカスや発疹の出現、軽い痛み、かゆみなど)も一定数いますのでケアが必要です。夫婦生活後にカンジダ腟炎になりやすい方はパートナーにも症状がないかどうか確認が必要ですね。
ちなみにカンジダ酵母は大きさ2-3 μmで、精子(頭部5μm前後、尾部まで入れると50 µm)に比べて小さいのですが、カンジダ酵母は(仮性)菌糸を出すと通常の顕微鏡での観察できるようになります。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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