プレコンセプションケア

2022.02.09

肥満がある方は痩せたら排卵は戻ってくる?(Reprod Med Biol. 2017)

はじめに

肥満がある女性が痩せると、妊活にはプラスのことが多いというのは周知の事実です。生活習慣に基づく結果なので、すぐに痩せることは難しいかもしれませんが、肥満で排卵障害がある女性は体重の7%の減量と、週150分以上のウォーキングなどの中程度の運動習慣を心掛けることを推奨されています。
通常の食事摂取量から500〜1000kcal/日減らせば、1週間で0.5-1kgの体重減少が期待でき、1000〜1200kcal/日の低カロリー食では6ヶ月間で平均10%の体重減少を達成でき、カロリー制限は減量を成功させるための基本原則であり、食事の構成はそれほど重要ではないとされています。
よく、海外の高度肥満の人を対象とした報告で国内ではあてはまらないのではないか?と質問を受けますので国内の報告もご紹介させていただきます。

ポイント

肥満による排卵障害のある女性が5%以上の体重減少を達成すると、約7割で排卵障害の改善が認められました。低カロリー食による減量介入は排卵機能の改善に有効そうです。

引用文献

Toshiya Matsuzaki, et al. Reprod Med Biol. 2017. DOI: 10.1002/rmb2.12034

論文内容

排卵障害のある肥満女性39名を登録した後、通常の3食のうち1食または2食をマイクロダイエット(MD)(240kcal/食)に置き換えて24週間食事制限を行いました。
対象者の女性は平均29歳、BMI 25以上であり、二ヶ月以上月経がこない排卵障害でPCOSの基準を満たしている方としました。
介入前、介入12週後、介入24週後に身体検査、内分泌検査、生化学検査を実施しました。39名の女性のうち、26名はクロミフェンを服用しませんでした。ダイエットの成果に応じて3つのグループ(5%未満の体重減少、5%〜10%の体重減少、10%以上の体重減少)に分け、排卵障害の改善を検討しました。

結果

39名の女性のうち31名(81.5%)に5%以上の体重減少が認められました。クロミフェン治療を受けていない26名のうち18名(69%)で排卵障害の改善を認めました。特に5%〜10%の体重減少と10%以上の体重減少を示した女性(計81.0%)では、5%未満の体重減少を示した群と比較して、排卵障害の改善は著明でした。排卵障害のある肥満患者に対して、低カロリー食を用いてダイエットすることで効果的に体重を減少し、排卵障害が改善することがわかりました。

私見

ダイエットは、やはり生活習慣の改善を含めて長期戦ですね。12週、24週での調査ですが、不妊症で苦しむ女性にとっては3ヶ月、6ヶ月は取り返しのつかない時間に感じてしまうと思います。また、ダイエットしても排卵障害が改善しない方もいるでしょうから、少しでも患者が希望をもてる意味のある対話ができるようにしていきたいところです。
今回の結果を通して、HOMA-IR、コレステロール、TG、空腹時血糖、肝機能が異常な方はダイエットで改善しているので、ひとつの比較評価項目としてモニターしてもいいと思います。
total testosteroneがベースの0.5-1.0 ng/mLから1.5 ng/mLに増加した群、もともと空腹時インスリン値が20 uU/mLと低い群はダイエットをしても排卵障害の改善にはつながっておらず、この辺りを患者様と情報共有モニターしながら妊娠にむけて共に向き合うことが大事なんだと思います。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# インスリン抵抗性、HOMA

# 月経異常

# 生活習慣

# 体重、BMI

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

妊娠前GLP-1受容体作動薬と妊娠中体重増加および妊娠転帰(JAMA. 2025)

2025.12.30

妊活における 痩せ薬(GLP-1受容体作動薬)(Fertil Steril. 2024)

2025.10.29

妊娠糖尿病におけるメトホルミン治療の安全性評価(BMC Pregnancy and Childbirth. 2025)

2025.08.06

過体重女性における減量における生殖医療成績(Hum Reprod. 2025)

2025.07.14

妊娠前体重減少が妊娠中血管機能や血管内皮に与える影響(F S Rep. 2025) 

2025.07.09

プレコンセプションケアの人気記事

2025.10.29

妊活における 痩せ薬(GLP-1受容体作動薬)(Fertil Steril. 2024)

精子は健康のバロメーター? 親族にも及ぶ男性不妊の影響 (Fertil Steril, 2025)

PCOS女性の妊娠前・初期メトホルミンが妊娠転帰に与える影響(Am J Obstet Gynecol. 2025)

妊娠中のベンゾジアゼピン使用と妊娠転帰リスク(JAMA Intern Med. 2025)

大豆摂取と腹腔鏡で確認された子宮内膜症リスクとの関連(Fertil Steril. 2025)

今月の人気記事

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

高年齢の不妊治療で注目されるPGT-A(2025年日本の細則改訂について)

2025.11.10

我が国の統計からの興味深い情報のご紹介~男性は何歳まで子供を作ることができるのか~

2023.06.03

自然周期採卵における採卵時適正卵胞サイズ(Frontiers in Endocrinology. 2022)

2025.03.25