プレコンセプションケア

2025.12.30

妊娠前GLP-1受容体作動薬と妊娠中体重増加および妊娠転帰(JAMA. 2025)

はじめに

GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)は肥満と2型糖尿病の治療選択肢として急速に普及しています。国内でもマンジャロ含めて様々な薬剤が承認されています。GLP-1RAは動物毒性試験で胎児構造異常が報告されており妊娠中は禁忌とされ、妊娠前または妊娠判明時に中止されます。今回、GLP-1RA中止後の妊娠中体重増加と妊娠転帰を検討したレトロスペクティブコホート研究をご紹介します。

ポイント

妊娠前GLP-1RA使用歴のある女性は、妊娠中体重増加が多く、早産、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群のリスクが高くなる可能性があります。

引用文献

Maya J, et al. JAMA. 2025 Nov 24. doi: 10.1001/jama.2025.20951.

論文内容

GLP-1RAの妊娠前または妊娠早期での曝露の有無により妊娠中体重増加と妊娠転帰を比較することを目的としたレトロスペクティブコホート研究です。2016年6月1日から2025年3月31日に単一医療機関で分娩した149,790例の単胎妊娠を対象としました。妊娠3年前から妊娠90日後までのGLP-1RA処方を曝露群とし、曝露妊娠1例に対し非曝露妊娠3例を傾向スコアマッチングしました。主要評価項目は妊娠中体重増加で、副次評価項目は妊娠中体重増加過多(Institute of Medicine 2009ガイドライン:妊娠前BMI 18.5未満12.5-18kg、18.5-24.9で11.5-16kg、25-29.9で7-11.5kg、30以上で5-9kgを超える増加)、LGA児(90パーセンタイル超)・SGA児(10パーセンタイル未満)、出生時体重パーセンタイル、早産、帝王切開、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群でした。

結果

対象期間中の149,790妊娠のうち、1,792例(曝露448例、非曝露1,344例)が主要解析でマッチされました。曝露妊娠の母体平均年齢は34.0歳(SD, 4.7歳)、妊娠前BMIは36.1(SD, 6.5)で、378例(84%)が肥満、104例(23%)が既存糖尿病を有していました。使用薬剤はセマグルチド45%、リラグルチド26%、デュラグルチド21%、チルゼパチド7%でした。GLP-1RA曝露妊娠は非曝露妊娠と比較して妊娠中体重増加が多く(平均13.7kg [SD, 9.2] vs 10.5kg [SD, 8.0]、差3.3kg; 95%CI, 2.3-4.2; P<.001)、妊娠中体重増加過多のリスクも高く(65% vs 49%; RR, 1.32; 95%CI, 1.19-1.47)、出生時体重パーセンタイルも高く(58.4% vs 54.8%; 差3.6%; 95%CI, 0.2%-6.9%)、早産(17% vs 13%; RR, 1.34; 95%CI, 1.06-1.69)、妊娠糖尿病(20% vs 15%; RR, 1.30; 95%CI, 1.01-1.68)、妊娠高血圧症候群(46% vs 36%; RR, 1.29; 95%CI, 1.12-1.49)のリスクが高くなりました。LGA(16% vs 15%; RR, 1.09; 95%CI, 0.83-1.42)、SGA(8% vs 8%; RR, 0.97; 95%CI, 0.65-1.44)、帝王切開については差がありませんでした。

私見

GLP-1RA中止後の体重回復は臨床試験で既に報告されています。
周産期に関連する報告として、Imbroane et al(Am J Obstet Gynecol. 2025)とHanif et al(Am J Cardiol. 2025)はTriNetXデータベースを用いてGLP-1RA曝露により妊娠合併症リスクが低下または差がないと報告していますが、これらの研究は主に診断コードに依存しており、今回の研究のような定量的臨床データによるものではありません。
本研究では妊娠前BMI(GLP-1RA治療後の体重)でマッチングしているため、GLP-1RA治療前の体重でマッチングしたら結果は変わったかもしれません。つまり、もっと有益性が高いという結果になったかもしれないということです。減量手術研究では同様の報告がなされています(Neovius, et al. JAMA. 2019)。術後BMIでマッチングした場合の先天異常リスクOR 1.1-1.2に対し、術前BMIでマッチングした場合はOR 0.6-0.7と保護効果を示しました。
GLP-1受容体作動薬の妊娠時のカウンセリングは今後重要になってきそうですね。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 糖尿病

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WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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