プレコンセプションケア

2026.03.17

体重管理薬中止後の体重回復ペース(BMJ. 2026)

はじめに

GLP-1受容体作動薬であるセマグルチドやGLP-1/GIP二重作動薬であるチルゼパチドなどの体重管理薬は、臨床試験において初期体重の15-20%の減量を達成し、肥満治療を変革しつつあります。しかし、実臨床では約50%の患者が12ヶ月以内に体重管理薬を中止していることが報告されています。体重管理薬中止後の体重回復の速度を定量化し、行動的体重管理プログラム後の体重回復と比較することを目的としたシステマティックレビューとメタアナリシスをご紹介いたします。

ポイント

体重管理薬中止後、平均して月0.4kgの速度で体重が回復し、1.7年後にベースライン体重に戻ると予測されました。行動的体重管理プログラム後と比較して、体重管理薬中止後の体重回復速度は有意に速いことが示されました。

引用文献

Sam West, et al. BMJ. 2026 Jan;392:e085304. doi: 10.1136/bmj-2025-085304.

論文内容

9288件をスクリーニングし、37研究(63介入群、9341人)が組み入れられました。平均治療期間は39週(範囲11-176週)で、平均追跡期間は32週(4-104週)でした。

体重回復速度について 

すべての研究を統合した解析では、体重管理薬の使用により治療終了時点で平均8.3 kg(95%CI 7.2-9.5)の体重減少が得られました。しかし、薬剤中止後は月あたり平均0.4 kg(95%CI 0.3-0.5)のペースで体重が回復し、治療前の体重に戻るまでに約1.7年かかると予測されました。 

薬剤の種類別では: 

  • すべてのインクレチン製剤:治療終了時10.1 kg減少→中止後は月0.5 kg回復→1.6年で治療前の体重に戻る 
  • 新規高効果インクレチン製剤(セマグルチド・チルゼパチド):治療終了時14.7 kg減少→中止後は月0.8 kg回復→1.5年で治療前の体重に戻る 

つまり、減量効果が大きい薬ほど、中止後の体重回復速度も速いという結果でした。 

ランダム化比較試験での対照群との比較 

薬を使った群と使わなかった群(対照群)を比較したランダム化比較試験28件の解析では: 

  • すべての体重管理薬:対照群より5.7 kg多く減量したが、中止後は対照群より月0.3 kg速く体重が回復し、1.4年後には対照群との差がなくなると予測されました 
  • すべてのインクレチン製剤:対照群より8.0 kg多く減量したが、中止後は対照群より月0.6 kg速く体重が回復し、1.1年後には対照群との差がなくなると予測されました 
  • 新規高効果インクレチン製剤:対照群より12.3 kg多く減量したが、中止後は対照群より月0.8 kg速く体重が回復し、1.3年後には対照群との差がなくなると予測されました 

心代謝マーカーの変化 

体重減少とともに改善した各種指標も、薬剤中止後は悪化しました: 

  • HbA1c:治療中:0.9 mmol/mol低下→中止後:月0.05 mmol/mol上昇
  • 空腹時血糖:治療中:0.5 mmol/L低下→中止後:月0.06 mmol/L上昇
  • 収縮期血圧:治療中:5.8 mm Hg低下→中止後:月0.5 mm Hg上昇
  • 拡張期血圧:治療中:3.7 mm Hg低下→中止後:月0.2 mm Hg上昇
  • 総コレステロール:治療中:0.2 mmol/L低下→中止後:月0.05 mmol/L上昇
  • トリグリセリド:治療中:0.2 mmol/L低下→中止後:月0.03 mmol/L上昇

すべての指標が体重管理薬中止後1.4年以内に治療前の値に戻ると予測されました。 

行動的体重管理プログラムとの比較 

行動的体重管理プログラム(食事・運動指導)では、プログラム終了時に平均5.1 kg減量し、終了後の体重回復は月0.1 kgのペースでした。一方、体重管理薬では初期の体重減少は平均3.2 kg大きかったものの、中止後の体重回復は月0.3 kg速くなりました。つまり、薬による減量効果は大きいが、中止後のリバウンドも速いということです。同じ量の体重減少(5 kg、10 kg、15 kg)で比較しても、体重管理薬中止後の方が行動的体重管理プログラム終了後よりも一貫して速く体重が回復しました。 

私見

体重管理薬中止後に急速な体重回復が起こり、わずか1.5〜1.7年で治療前の体重に戻ってしまうことです。
体重管理薬は薬理作用による空腹感減少と満腹感増加で体重減少を達成するため、薬剤中止後に意識的な食事・運動努力の価値が損なわれる可能性があると考察しています。
最近、妊活のためにGLP-1受容体作動薬を使用される方が少なくありません。妊活が終われば自己管理がやめていいというわけではありません。我々医療者もそうですが、健康的な生活習慣を心がけていきましょう。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 体重、BMI

# プレコンセプション

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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