はじめに
hMG量が150単位スタートのGnRHアンタゴニスト法であれば、新鮮胚移植後の出生率は、卵子9個(40.3%)または胚4個(40.8%)でプラトー、累積出生率は、12個の卵子(42.9%)または9個の胚(53.8%)で最適化するとされています(一周期何個の卵子をとれば効率がよいの?( Reprod Biomed Online. 2021)。
限られた施設での報告のためビッグデータでの初回新鮮胚移植周期での生殖医療結果との関連を検討したレトロスペクティブ・コホート研究を改めてご紹介させていただきます。
ポイント
単一新鮮胚盤胞移植の臨床妊娠率・出生率は胚盤胞数5個までは上昇し、それ以降は低下する。35歳以上では5個を超えても妊娠率は維持される。
引用文献
Stephanie Smeltzer, et al. Fertil Steril. 2019. DOI: 10.1016/j.fertnstert.2019.06.030
論文内容
2014~2015年のSART(米国ART協会)データベースに登録されている新鮮胚盤胞移植を行った全女性16,666名の患者を対象に臨床妊娠率、出生率、流産率をロジスティック回帰法にて、胚盤胞数と各項目との関連を検討しました。
結果
患者年齢の中央値は32.1±3.5歳で、男性不妊症(38.0%)、多嚢胞性卵巣症候群(19.9%)、原因不明不妊(20.8%)でした。回収卵子数の中央値は15個、胚盤胞数の中央値は4個でした。
単一新鮮胚盤胞移植では、臨床妊娠率は、胚盤胞数が5個まで増えるごとに18%高くなり、5個以降は増えるごとに2%ずつ低下しました(OR 1.18、95%CI 1.15-1.21;P<0.0001)(OR 0.98, 95% CI 0.97-0.99; P=.05)。出生率のオッズは、胚盤胞が5個まで増えるごとに17%高くなり、5個以降では1個増えるごとに2%低下しました(OR 1.17, 95% CI 1.14-1.20; P<.0001)(OR 0.98, 95% CI 0.97-0.998; P=.02)。胚盤胞数と流産率の間に有意な関連は認められませんでした。
私見
米国のビッグデータでは単一新鮮胚盤胞移植の臨床妊娠率・出生率共に卵巣刺激での胚盤胞数が5個まで増えるごとに有意に上昇し、それ以降は下降することがわかりました。胚盤胞を5個以上とるような卵巣刺激では、移植時の子宮内膜受容性に悪影響を及ぼす可能性が考えられます。
この論文の面白いところは35歳以上の女性2,697名では、臨床妊娠率のオッズは、胚盤胞数が5個まで増えるごとに31%高くなり(OR 1.31, 95% CI 1.17-1.48; P<.0001)、胚盤胞数が5個を超えても臨床妊娠率との有意な関係は認められなかったところです(OR 1.03, 95% CI 0.99-1.07; P=.15)。年齢が上がると胚の質が重要な因子になりますから、ある程度までは形態で評価できるということですね。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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