はじめに
AMHは、いつ測っても同じような測定結果になるという風に説明を受けることが多くあります。ただ、状況によってAMHに影響を与える因子がないわけではありません。患者様からよく質問を受ける内容の1つですのでコラムにしました。
ポイント
月経周期やピル内服、BMI、民族差などがAMHに影響を与える可能性があります。特にPCOS女性では減量によりAMHが低下する傾向があります。
引用文献
– John F Randolph Jr, et al. Hum Reprod. 2014. DOI: 10.1093/humrep/det447
– K A Kissell, et al. Hum Reprod. 2014. DOI: 10.1093/humrep/deu142
– Lia A Bernardi, et al. Fertil Steril. 2021. DOI: 10.1016/j.fertnstert.2021.02.007
– Thomas Reinehr, et al. Clin Endocrinol (Oxf). 2017. DOI: 10.1111/cen.13358
– Mohammad Nouri, et al. Clin Endocrinol (Oxf). 2017. DOI: 10.1111/cen.13098
– Laura Melado, et al. Front Endocrinol (Lausanne). 2021 doi: 10.3389/fendo.2021.735116
論文内容
● 月経周期による影響
定期的に月経のある30-40歳の健康な女性20名(BMI 24.5-26.5kg/m²)のAMHを毎日測定した結果を示しました。AMH濃度は卵胞期中期に増加、排卵前後に減少、黄体期中期に増加の傾向を示しましたが、AMH濃度が高い群でしか差がとらえられず、低い群では差がほとんどみられませんでした。
同様の傾向は18-44歳の259名の女性を対象に、月経周期中に1回(n = 9)または2回(n = 250)AMHを測定した前向きコホート研究でも報告されています。
John F Randolph Jr, et al. Hum Reprod. 2014. DOI: 10.1093/humrep/det447
K A Kissell, et al. Hum Reprod. 2014. DOI: 10.1093/humrep/deu142
● ピルによる影響
ホルモン避妊薬の現在使用者はAMH値が有意に低下するが、その効果は可逆的です。経口避妊薬、腟リング、酢酸メドロキシプロゲステロンデポ剤の使用者において平均AMH値の低下が認めましたが、過去の使用経験や累積使用期間とAMH値との間には有意な関連は認められませんでした。
Lia A Bernardi, et al. Fertil Steril. 2021. DOI: 10.1016/j.fertnstert.2021.02.007
● BMIとの関係
まだまだ結論が出ていませんが、BMIが直接関係するというより、PCOSに伴う変動の方が主かもしれません。
13-16歳の女性を対象とした研究ですが、PCOSがある肥満女性は減量するとAMHが下がりますが、PCOSがないと減量してもAMHが下がらないという報告があります。
Thomas Reinehr, et al. Clin Endocrinol (Oxf). 2017. DOI: 10.1111/cen.13358
また18-40歳までのPCOS女性38名と非PCOS女性38名を対象に、AMH、AMHR-II、AR mRNA値を卵丘細胞で定量的RT-PCRによって検討した報告ではAMHおよびAMHR-IIの発現はBMIと負の相関を示し、AR発現はBMIと正の相関を示したとされています。
Mohammad Nouri, et al. Clin Endocrinol (Oxf). 2017. DOI: 10.1111/cen.13098
● 民族間による影響
AMHは人種間で差があるという報告があります。アジア系、アフリカ系アメリカ人、ヒスパニック系、インド系アメリカ人は、白人/白人の基準集団と比較して、ART後の出生率(LBR)が低く、流産率が高いことが示されています。
もともとの遺伝学的な違いもあるかもしれませんが、食生活や民族間の風習によるものも影響すると言われています。
そのなかの一番特徴的なのはイスラム教の着衣の影響です。
アラビア半島出身の19-50歳の女性2,495人を対象に、レトロスペクティブな大規模研究を行ったところ、低い卵巣予備能の割合が大いに高くなりました。イスラム教女性のヒジャブ・ニカブの着用によるものかもしれないとしています。ちなみに肌を覆う部分が少ないヒジャブ群はニカブ群に比べてAMHが高い傾向にありました。
Laura Melado, et al. Front Endocrinol (Lausanne). 2021 doi: 10.3389/fendo.2021.735116
私見
AMHは卵巣予備能を反映する重要なマーカーですが、測定時期や条件によって変動することを理解しておく必要があります。月経周期による変動は比較的小さいものの、排卵期には若干低値を示す可能性があるため、正確な評価が必要な場合は測定時期を考慮すべきでしょう。また、ピル内服中の測定では実際よりも低い値が出る可能性があるため、服用歴を確認することが重要です。BMIとの関連については、特にPCOS患者において減量によるAMH低下が認められており、体重管理が卵巣機能に影響を与える可能性が示唆されます。さらに民族差も存在することから、AMH値の解釈には個々の背景を考慮した慎重な判断が求められます。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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