一般不妊

2022.08.05

慢性子宮内膜炎検査は月経周期いつ頃に行うの?

はじめに

慢性子宮内膜炎の検査は排卵前がよいというのが一般的です。
ただ、このような根拠は耳学問であることが多く、根拠となる論文を辿らず皆がそう言っているからと行われていることがあります。慢性子宮内膜炎の検査は排卵前が良いと言われる根拠を調べてみました。私自身としては「慢性子宮内膜炎の検査は、月経が終わって性器出血が終わって数日たった時期から排卵後数日(分泌期後半は除く)までなら問題ない。ただし、妊娠している可能性がある場合は、排卵後の慢性子宮内膜炎検査は行わない」が良いのではないかと考えています。

ポイント

慢性子宮内膜炎の検査は月経終了後から排卵後数日までが推奨されます。分泌期後半は診断精度が低下するため避けることが好ましく、妊娠の可能性がある場合は排卵後の検査を行わないことが重要そうです。

論文内容

①排卵後は内膜表層だけがとれてしまい、内膜基底層付近の組織がしっかり採取しづらいから診断精度が落ちる、というのが1つ目の根拠です。
確かに慢性子宮内膜炎を疑う細胞は表層より基底層付近に存在することが多く、これは私も感じています。診断をつけるには患者様は痛いけれど、しっかり内膜をとることが必要だと思います。
Kitaya K, et al. Am J Reprod Immunol 2011;66:410–5

現在の慢性子宮内膜炎を不妊治療との関係なく研究されていた時代の論文では、メチルピロニングリーン染色が行われています。この時代に月経周期と子宮内膜炎の関係を調べた論文が引用されます。

②分泌期後半(排卵と月経が来る間の後半)が子宮内膜炎の検出率が低い。
Eckert LO, et al. Endometritis: the clinical-pathologic syndrome. Am J Obstet Gynecol 2002;186:690–5.

③急性子宮内膜炎で救急外来にかかった名で子宮内膜炎を示唆する細胞が少ない時期は分泌期(排卵後)である。
Punnonen R, et al. Arch Gynecol Obstet 1989;244:185–91.

慢性子宮内膜炎の病理組織学的診断は、子宮内膜間質における形質細胞の存在に基づいて行われます。現在、国内ではCD138免疫染色で慢性子宮内膜炎の診断が行われますが、保険では慢性子宮内膜炎のための免疫染色が許可されていません。通常ルーチンで行われるHE染色で慢性子宮内膜炎を示唆する所見の判断材料になるのが好酸顆粒をもった細胞の存在で、この細胞が多いと慢性子宮内膜炎である可能性が高いとされています。この観点から月経周期を調べた報告があります。

④HE染色で好酸球が検出される症例は、増殖期(排卵前)や分泌期前期・中期(排卵と月経が来る間の前半部分)の方が、分泌期後半(排卵と月経が来る間の後半)や月経期よりCD138陽性率が高い。
Adegboyega PA, et al. Hum Pathol 2010;41:33–7.

⑤増殖期の方が、分泌期(排卵後)より好酸球が検出される症例が高い。
Song D, et al. Reprod Biomed Online 2018;36:78–83.

私見

子宮内膜細菌叢検査は反対に分泌期が安定するとされています。あえて別々に検査をおこなうかどうかは、子宮内膜生検は軽微とはいえど侵襲的な検査ですので患者様の疾患背景にあわせておこなっていくようにしています。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 月経異常

# 子宮内膜厚、形態

# 慢性子宮内膜炎

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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