男性不妊

2023.01.23

男性年齢は卵子提供でも出生率に影響する?(J Assist Reprod Genet. 2023)

はじめに

卵子提供を受ける場合は男性パートナーの年齢を全く気にしなくていいのでしょうか。男性年齢上昇に伴う、児の生まれたあとの自閉症などの発生予後も懸念されていますが、妊娠・出産までに関してはどうでしょうか。現在までの報告をまとめたシステマティックレビューをご紹介いたします。

ポイント

男性年齢の上昇は、ドナー卵子を用いても出生率にわずかですが低下をもたらすことが示されました。今回の報告では明確なカットオフ年齢がなく、直線的に低下する傾向がありました。

引用文献

Emmanuelle Begon, et al. J Assist Reprod Genet. 2023 Jan 18. doi: 10.1007/s10815-023-02714-1.

論文内容

PubMed、Embase、Cochrane Libraryにて2021年6月30日までの文献検索を行い、出生率が男性年齢に応じて報告されているドナーエッグ周期に関するすべての研究を対象としました。

結果

10,527のドナーエッグ周期を含む11報告を選択いたしました。メタアナリシスの結果、出生率は男性年齢の上昇に伴い、わずかですが有意かつ直線的に減少し(推定値 – 0.0055, 95% CI: – 0.0093 – 0.0016, p = 0.006)、異質性は低い(I2 = 25%)ことが示されました。男性年齢が上がるにつれて臨床妊娠率も低下する傾向が認められましたが有意差までは認めませんでした。

Peyser A, et al. Am J Obstet Gynecol. 2001;184:818–22.
Gu L, et al. J Assist Reprod Genet. 2012;29(4):331–334.
Beguería R, et al. Hum Reprod. 2014;29:2114–22.
Capelouto SM, et al. Fertil Steril. 2018;110:859–69.
Cito G, et al. Transl Androl Urol. 2019;8:S22-30.
Setti AS, et al. Andrology. 2020;8:594–601.
McCarter K, et al. Fertil Steril. 2021;S0015–0282(21):00242–9.
Duran EH, et al. Reprod Biomed Online. 2010;20:848–56.
Frattarelli JL, et al. Fertil Steril. 2008;90:97–103.
Robertshaw I, et al. Reprod Sci. 2014;21:590–3.
Whitcomb BW, et al. Fertil Steril. 2011;95:147–51.

私見

男性年齢が上がると生殖能力が低下するメカニズムが何個か考えられています。事前にチェックし、カウンセリングできることはしていくべきなんだと思います。

  1. 精子所見として、精液量と運動率は男性年齢とともに低下する可能性があります。
  2. 精子のDNA損傷上昇の可能性があります。精細管内のDNA修復メカニズムの破綻は、体内の酸化ストレスの増加などが原因かもしれません。
  3. 胚の発生については、男性年齢とともに初期胚のグレード低下、胚盤胞到達率の低下を示す報告があります。染色体異数性がどの程度、男性年齢上昇で変わるかはまだ議論が分かれるところです。
  4. 卵子の修復機能

卵子には精子を初期胚発生の段階で修復する能力をもっているとされていますが、女性年齢とともに低下するとされています。精子の元々のダメージ、卵子の修復機能が共に重要のようです。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 出生児予後

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WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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