体外受精

2023.04.21

凍結融解正倍数性胚移植成績は直前のクロミフェン内服に影響を受けない(レトロスペクティブコホート2023)

はじめに

クロミフェンクエン酸塩(クロミッド®:CC)は1960年代後半に開発されて以来、排卵に対して有効ですが、子宮頸管粘液に対する抗エストロゲン作用(Marchini, et al. 1989; Randall and Templeton, et al. 1991)、子宮内膜血管抵抗変化(Kupesic and Kurjak. 1993)、子宮内膜菲薄化による直接的作用(Eden, et al. 1989)により、着床に対して負の影響を示すとされています。人工授精などの場合は排卵に対して正の効果、着床に対しての負の効果を合わせても原因不明不妊に対して成績改善が見込めることがわかっていますが、体外受精治療では卵巣刺激周期と胚移植周期が凍結を挟むことにより乖離させることができるため、先行するCCの影響があるかどうかが議論の対象となっています。今回、凍結融解正倍数性胚移植成績は直前のCC内服に影響を受けないという報告が追加して出てきましたのでご紹介させていただきます。

ポイント

単一正倍数性胚盤胞移植をするうえで直近90日以内のCC内服既往は生殖医療結果に影響を与えなさそうです。

引用文献

Carlos Hernandez-Nieto, et al. Hum Reprod. 2023. doi: 10.1093/humrep/dead072

論文内容

単一生殖医療施設にて2016年9月から2022年9月までに単一正倍数性胚盤胞移植を実施した患者を対象とした傾向スコアマッチングによるレトロスペクティブコホート研究です。凍結融解単一正倍数性胚盤胞移植の90日以内にCCを使用したことのある女性と90日以内にCC内服歴がない女性を、妊娠検査陽性率(胚移植の9日後に測定した血清β-hCG陽性と定義:主要評価項目)、臨床妊娠率、継続妊娠率、生化学妊娠率、流産率(副次評価項目)で比較検討しました。

結果

胚移植90日以内にCCを利用したCC暴露群女性593名とマッチさせた対照群女性1779名を比較した。妊娠検査陽性率は、対照群とCC曝露群でそれぞれ同等であり(74.3% vs. 75.7%、P = 0.79)、臨床妊娠率(64.0% vs. 65.0%、P = 0.60)、継続妊娠率(51.8% vs. 53.2%、P = 0.74)、生化学妊娠率(15.7% vs. 14.03%、P = 0.45)、流産率(17.1% vs. 18.1%、P = 0.71)も差を認めませんでした。CC使用と着床率の低下には関連を認めませんでした(aOR0.95、95%CI 0.76-1.18)。サブグループ解析では、CC使用周期回数と着床率にも関連は認めませんでした。

私見

CCを用いた刺激をおこなった場合は妊娠率向上のために全胚凍結が好ましいとされています(Reed BG, et al. JBRA Assist Reprod 2018;22:355–362)。全胚凍結した後でもCCのウォッシュアウト期間を考えると、中川ら(2014)はCC投与から90日あけた方がよいとしていますが、加藤ら(2018)は最終投与からCC投与60日未満では新鮮胚移植は成績低下につながる可能性を懸念していますが、その後の凍結融解胚移植には影響しないとしています。

クロミッド®内服により移植成績は低下する? 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# クロミフェン、AIなど

# 着床前遺伝学的検査(PGT)

# 凍結融解胚移植

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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