治療予後・その他

2023.05.26

妊娠高血圧腎症予防にアスピリンの使用方法は?(Am J Obstet Gynecol. 2023)

はじめに

国内でも妊娠高血圧腎症予防にアスピリンを検討することが一般化してきていますが、海外ではアスピリンの取り扱いはどのようになっているのでしょうか。2023年現在、服用する、しないではなく、投与量と開始時期の議論をされているようです。

ポイント

各国の産科学会は妊娠高血圧腎症予防にアスピリンを推奨していますが、推奨投与量と開始時期には違いがあります。アスピリン100mg/日以上を妊娠16週以前に開始することが最も効果的とされ、81mg/日では予防効果が不十分である可能性が示唆されています。

引用文献

Rebecca Horgan, et al. Am J Obstet Gynecol. 2023 Apr 27;S0002-9378(23)00269-7. doi: 10.1016/j.ajog.2023.04.031.

論文内容

米国産科婦人科学会は、PE(preeclampsia:妊娠高血圧腎症)発症のリスクがある女性には、アスピリン81mg/日を妊娠12~28週(最適には16週より前に)に開始し、出産まで継続することを推奨しています。
WHOは、PEリスクが高い女性には、アスピリン75mg/日を妊娠20週までに開始することを推奨しています。
RCOGとNICEの「PEリスクの出生前評価」では、PEリスクが高い女性にアスピリンを妊娠12週から推奨しています。RCOGでは150mg/日、NICEでは、PE中リスクでは75mg/日、PE高リスクでは150mg/日を提示しています。
FIGOは、PEリスクが高い女性にアスピリン150mg/日もしくは81mg 2錠/日を妊娠11-14週6日より開始することを提案しています。

私見

過去のレビューによれば、PE予防にはアスピリン投与量と投与開始のタイミングの両方が重要であることがわかっています。現在のところ、アスピリン100mg/日以上の投与を、妊娠16週以前に開始するのが最も効果的であるとされていて、81mg/日では予防効果に乏しいのではないかとされています。以前に比べて認知もあがってきており、適切なアスピリン予防投与を進めていきたいと思っています。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# アスピリン、ヘパリン

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