治療予後・その他

2023.06.15

メディカル卵子凍結/ノンメディカル卵子凍結の医療者・対象者の受け取り方(Sci Rep. 2023)

はじめに

卵子凍結には、がん治療などにより性腺毒性があり妊孕性を失う前に行うメディカル卵子凍結、医学的適応以外の加齢などにより妊孕性を低下する前に女性のライフタイムマネージメントを目的に行うノンメディカル卵子凍結の二種類があります。 
メディカル卵子凍結には肯定的な印象を抱く人が多い一方、ノンメディカル卵子凍結には慎重的に検討すべきという意見が多いのが現状です。同じ手技を行うのに、認識の差がなぜ生じるのか、対象となる若年女性がどう感じるのか、とても興味深いテーマです。 
日本産婦人科学会はわかりやすい「ノンメディカルな卵子凍結をお考えの方へ」というページ・動画を提供しています。 
https://www.jsog.or.jp/modules/committee/index.php?content_id=302

では、医療者側と卵子凍結対象者となる若年女性の受け取り方はどうなんでしょうか。 スウェーデンの女子大生を対象に医学的理由と加齢的理由による妊孕性を維持する方法としての卵子凍結に対する意識・認識の違いをオンライン調査した報告をご紹介いたします。 

ポイント

ノンメディカル卵子凍結は、社会的ニーズや女性の生き方の多様性・満足性などを総合的に判断して行なっていく必要がありそうです。 

引用文献

Pietro Gambadauro, et al. Sci Rep. 2023 Apr 1;13(1):5325. doi: 10.1038/s41598-023-32538-z. 

論文内容

スウェーデンの女子大生(n = 270、年齢中央値25歳、範囲19-35歳)を対象に、35歳で子供がいないことを前提に医学的理由で妊孕性を低下するシナリオ(n=130)または加齢により妊孕性を低下するシナリオ(n=140)を無作為に提示し、(1)卵子凍結実施に対しての前向きさ、(2)卵子凍結への公的助成に支持、(3)卵子凍結実施を考慮するかどうか、(4)卵子凍結にいくらくらい払って良いかを調査しました。 

結果

 (1)卵子凍結実施に対しての前向きさ(メディカル:96%、ノンメディカル:93%)、(3)卵子凍結実施を考慮するかどうか(医学的:90%、加齢関連:88%)、(4)卵子凍結にいくらくらい払って良いかには両群で差は認めませんでした。しかし、(2)卵子凍結への公的助成に支持(メディカル:85%、ノンメディカル:64%)と差を認めました。 

    私見 

    スウェーデンの女子大生ではノンメディカル卵子凍結についての支持は高い傾向がありました。調査された時期、対象、国、同じ国の中でも都市部かどうかなどによってばらつきが大きそうですね。今後の国内の動向にも注目です。 
    “You cannot see the wood for the trees.”
    ニュートラルな対応を検討していきたいと思います。 

    中国(46%)
     Zhou, Y. et al. J. Assist. Reprod. Genet. 39, 1383–1392 (2022). 
    イタリア(19.5%)
     Tozzo, P., et al. Life Sci. Soc. Policy 15, 1–14 (2019). 
    シンガポール(48.9%、医学生)
     Tan, S. Q., et al. J. Obstet. Gynaecol. Res. 40, 1345–1352 (2014). 
    米国(71%、医学生)
     Ikhena-Abel,D.E.et al. J. Assist. Reprod. Genet. 34, 1035–1041 (2017).) 

    文責:川井清考(WFC group CEO)

    お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

    # がんと生殖医療

    # 妊孕性温存

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    # 倫理課題

    WFC group CEO

    川井 清考

    WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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