一般不妊

2025.02.04

DTCとしてのAMH検査の流れ(Hum Reprod. 2024)

はじめに

抗ミュラー管ホルモン(AMH)は、卵巣予備能の評価や不妊治療における卵巣刺激への反応性を予測する有用なマーカーとして知られています。近年、海外では、直接消費者向けDTC(Direct-to-Consumer)AMH検査が人気を集めており、不妊や低妊孕性の兆候がない場合でも利用されるようになってきています。AMHに対しての海外で行われたアンケート調査をご紹介いたします。

ポイント

直接消費者向けとしてのAMH検査は、適切なカウンセリングと解釈が重要です。日本でのプレコンセプション検査を実施したときに説明と通じるところがありそうです。

引用文献

Ali ZE, et al. Hum Reprod. 2024. doi: 10.1093/humrep/deae234

論文内容

非不妊治療目的でのAMH検査の役割、利点、リスクを評価することを目的としました。オーストラリアの18-55歳の女性1,773名を対象としたAMH調査研究の分析を行いました。

結果

調査対象者のうち124名(7%)がAMH検査を受けており、そのうち63名(51%)が不妊検査の一環として、39名(31%)が非医学的理由(妊孕性に関する興味や妊娠を考えているなど)で検査を受けていました。AMH検査について聞いたことがある228名(13%)のうち、124名(54%)が検査を受け、104名(46%)が受けていませんでした。

検査を受けた人の大多数が生殖医療専門医(97%)や家庭医(86%)から検査について知った一方、未検査者の多くは広告(85%)や友人・家族(73%)から情報を得ていました。

私見

DTCとしてのAMH検査が普及すると、アクセスの容易さという利点がある一方で、結果の誤解や不必要な不安を引き起こす可能性があります。また、民族間でAMH基準値に差があることも重要な点で、アジア人女性ではヨーロッパ人女性と比較して低値傾向にあること、ピルの種類によって内服中は低値にでることが報告されています。過剰な不安を煽らないような対策を講じる必要がありそうです。

文責:川井清考(WFC group CEO)

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# 抗ミューラー管ホルモン(AMH)

# 妊孕性温存

# 卵巣予備能

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