一般不妊

2026.02.11

正常月経周期における黄体機能不全の予測因子(Front Public Health. 2018)

はじめに

一般不妊治療(タイミング指導や人工授精)は、周期あたりの妊娠率は10%弱であり、生殖補助医療を行う施設からみると、生殖補助医療に進んで配偶子の質、胚発生、着床状況などをみてみないと一般不妊治療・検査内で不妊原因を決めつけるのはよくないと思ってしまいます。
その最たるものが黄体機能不全です。黄体機能不全で不妊と言われましたと来院される患者様は数多くいます。黄体機能不全は正常ホルモンプロファイルからの連続性の中からの逸脱であり原因特定は難しいです。黄体補充をすれば事足りるのですが、自然周期凍結融解胚移植が見直されている中、黄体機能不全を理解しておくことが重要だと考えています。
ただ、論文が1980年代から2000年前半と古く、最近の超音波管理下での報告は多くありません。正常月経周期女性における黄体機能不全に関連因子が予測因子となるかどうかを評価した最近の報告をご紹介いたします。

ポイント

黄体機能異常は連続的なスペクトラムとして存在し、一部の排卵障害は正常排卵過程からの逸脱として存在する可能性があります。卵胞サイズが小さい状態での排卵が黄体期の質にネガティブな影響が確認されました。

引用文献

Abdulla SH, et al. Front Public Health. 2018 May 24;6:144. doi: 10.3389/fpubh.2018.00144.

論文内容

正常周期女性における排卵前期、排卵周辺期、黄体期の特徴間の潜在的関係を調査することを目的とした観察研究です。8施設から99名266周期が解析されました。組み入れ基準は年齢19-45歳、前回の月経周期24-34日で、無排卵周期、不妊症、PCOS、黄体機能不全などの異常周期の既往がないことでした。参加者は毎日早朝尿を採取し、エストロン-3-グルクロニド(E1G)、プレグナンジオール-3α-グルクロニド(PDG、プロゲステロンの尿中代謝産物)、FSH、LHを測定しました。また、頸管粘液出現またはLH surge検出から開始し、卵胞が16mmに達するまで1日おき、その後排卵確認まで毎日の連続的な経腟超音波検査を受け、超音波で決定された排卵日(US-DO)を確定しました。ホルモン測定は周期3日目±1日(卵胞期早期)、US-DO±1日(排卵周辺期)、US-DO+5日、US-DO+7日、US-DO+9日の平均値(黄体期中期PDG値:mPDG)で評価しました。評価項目として、短い黄体期(US-DO+1日から月経前日までが12日未満)、低いmPDG(10 µg/mg Cr未満)、正常から低下する黄体期PDG値(US-DO+5日とUS-DO+7日の平均が10 µg/mg Cr以上だがUS-DO+9日が10 µg/mg Cr未満、つまり黄体期後期の早期低下)、低値から正常化する黄体期PDG値(US-DO+5日が10 µg/mg Cr未満だがUS-DO+7日とUS-DO+9日の平均が10 µg/mg Cr以上、つまり遅延黄体化)の4つを解析しました。

結果

単変量解析では、長い排卵前期(月経開始からUS-DOまで)、小さい最大卵胞サイズ(20mm未満)、高い排卵周辺期PDG値が「短い黄体期」と有意に関連していました(P<0.05)。BMI高値、若い初経年齢、低い卵胞期早期PDG値、小さい最大卵胞サイズ、低い排卵周辺期PDG値が「低いmPDG」と関連していました(P<0.05)。小さい最大卵胞サイズと高い排卵周辺期PDG値は、「正常から低下する黄体期PDG値(黄体期後期の早期低下)」のリスクを約3倍に上昇させました(P<0.05)。高い卵胞期早期PDG値と高い排卵周辺期PDG値は、「低値から正常化する黄体期PDG値(遅延黄体化)」のリスクを約3分の1に低下させました(P<0.05)。多変量解析では、長い排卵前期は、他の変数で調整の有無にかかわらず、「短い黄体期」の独立した予測因子でした(OR 1.45; 95%CI 1.23-1.71)。高い排卵周辺期PDG値は、「短い黄体期」(OR 3.71; 95%CI 1.66-8.27)と「正常から低下する黄体期PDG値」(OR 3.39; 95%CI 1.55-7.4)の独立した予測因子でした。低い排卵周辺期PDG値は、他の変数で調整の有無にかかわらず、「低いmPDG」(OR 0.30; 95%CI 0.16-0.54)と「低値から正常化する黄体期PDG値」(OR 0.24; 95%CI 0.12-0.48)を予測しました。小さい最大卵胞サイズは、他の変数で調整の有無にかかわらず、「正常から低下する黄体期PDG値」を予測しました(OR 3.21; 95%CI 1.50-6.87)。小さい最大卵胞サイズと短い黄体期、または小さい最大卵胞サイズと「低いmPDG」との関係は、特定の特徴で調整すると消失しました。若い初経年齢とBMI高値は、いずれも「低いmPDG」の予測因子でした。

私見

短い黄体期、低いmPDG、正常から低下するPDG値(黄体期後期の早期低下)はすべて小さい最大卵胞サイズの場合により頻繁に発生していました。興味深いことに、低値から正常化するPDG値(遅延黄体化)は調節プロセスと考えられ、PDG値が低い周期では正常PDG値に到達するまでの時間が長くなることから、黄体機能異常の徴候ではないようです。一方、高い排卵周辺期PDG値(早期黄体化)は黄体期に有害である可能性があり、その後より頻繁に短い黄体期と正常から低下するPDG値を示しました。
超音波で確認された排卵日を基準とした大規模研究があまりないので、黄体機能不全をイメージする上で参考となる文献だと思います。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 黄体機能不全

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# 基礎研究

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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