
はじめに
子宮内膜ポリープは子宮内膜組織の限局性の良性増殖性病変であり、機能性子宮出血を有する女性の13~50%、無症状で超音波検査を受ける女性の約10%に認められる比較的頻度の高い疾患です。標準治療は出血症状の改善および悪性疾患除外目的での子宮鏡下切除であり、最初の診断には経腟超音波検査が第一選択となります。従来から用いられてきた診断所見として、エコー輝度の高い子宮内膜病変や単一栄養血管(pedicle artery sign)が知られていますが、これらは体格や月経周期のタイミングにより描出が困難な場合もあります。今回、新たな超音波所見として「中断粘膜サイン(interrupted mucosa sign)」の診断的有用性を検討した報告をご紹介いたします。
ポイント
中断粘膜サイン(interrupted mucosa sign)は多変量解析において子宮内膜ポリープの病理診断を独立して予測する唯一の超音波所見であり(OR 3.83)、従来の所見と組み合わせることで診断能の向上が期待されます。
引用文献
Kamaya A, et al. J Ultrasound Med. 2016 Nov;35(11):2381-2387. doi: 10.7863/ultra.15.09007.
論文内容
中断粘膜サインが子宮内膜ポリープの同定に有用であるかを病理組織診断を基準として、従来の超音波所見と比較検討することを目的としたレトロスペクティブ研究です。
子宮内膜ポリープが疑われ骨盤超音波検査が施行された195人を後方視的に検討し、そのうち子宮内膜の組織採取が行われた82人を最終解析対象としました。患者の年齢、閉経状態、最終月経日、最終病理診断を記録し、超音波画像は2名の盲検下の認定放射線科医により、子宮内膜の厚さ、エコー輝度、血流、腫瘤の有無、および中断粘膜サインの有無について評価されました。中断粘膜サインは、対向する子宮内膜粘膜面が接合する高エコーの線状界面が、ある一点で限局的に途絶している(典型的には子宮内膜ポリープによる)所見と定義されました。記述統計および多変量ロジスティック回帰分析が行われました。
結果
患者の平均年齢は44.99歳(SD 9.88)であり、79.1%が閉経前でした。病理診断ではポリープが58例(70.73%)、平滑筋腫が6例(7.32%)、子宮内膜増殖症が2例(2.44%)、異常なしが16例(19.51%)で確認されました。単一栄養血管はポリープ症例の36例(62.07%)で、中断粘膜サインは34例(58.62%)で描出されました。栄養血管または中断粘膜サインのいずれか、あるいは両方が認められたものはポリープ48例(82.76%)でした。多変量解析では中断粘膜サインのみがポリープの病理診断を有意に予測する所見であり(P=.035)、OR 3.83(95%CI、1.10–13.29)でした。その他の超音波所見はポリープの独立した予測因子とはなりませんでした:腫瘤(P=.35)、単一栄養血管(P=.31)、子宮内膜厚(P=.88)、子宮内膜エコー輝度(P=.45)。中断粘膜サインの感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率はそれぞれ59%、75%、85%、43%でした。一方、単一栄養血管はそれぞれ62%、50%、75%、50%、腫瘤の存在は84%、25%、73%、40%でした。閉経状態と中断粘膜サインまたは単一栄養血管との間に統計学的に有意な交互作用は認められませんでした(P>.05)。
私見
子宮内膜ポリープの診断において、従来から最も広く用いられてきた所見はTimmermanらが2003年に提唱した「pedicle artery sign(栄養血管所見)」です(Timmerman D, et al. Ultrasound Obstet Gynecol. 2003)。
先行研究との対比では、Baldwinらは子宮内膜腔の辺縁に沿った高エコー線が筋腫、ポリープ、増殖症、限局性腫瘍の良好な予測因子であると報告していますが、これらの病態の鑑別には用いられていませんでした(Baldwin MT, et al. Radiographics. 1999)。Tamura-Sadamoriらは粘膜下筋腫と子宮内膜ポリープの超音波鑑別について報告しており(Tamura-Sadamori R, et al. J Ultrasound Med. 2007)、Kupferらは経腟超音波による子宮内膜ポリープ評価を報告しています(Kupfer MC, et al. J Ultrasound Med. 1994)。子宮鏡や生理食塩水注入子宮卵管造影(SIS)との診断能比較研究も複数あります(Grimbizis GF, et al. Fertil Steril. 2010、Soguktas S, et al. Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 2012、Alcázar JL, et al. J Ultrasound Med. 2004)が、これらの多くは骨盤超音波で異常所見を有する患者のみを対象としており、選択バイアスによりSISの診断率が見かけ上高く評価されている可能性があります。
今後、慢性子宮内膜炎を疑う超音波所見候補がみつかってくるとより良いかなと思っています。
この中に書かれてあるエコー画像所見は見づらいですが参考になります。
【Figure 1】栄養血管を伴わない中断粘膜サイン
高エコーのポリープ(青矢印)が子宮内膜粘膜(黄矢印)を限局的に中断している所見を示しています。グレースケール画像では中断粘膜サインが明瞭に描出されていますが、カラードプラ画像では栄養血管(pedicle artery sign)が描出されていません。
【Figure 2】低エコー子宮内膜における中断粘膜サイン
月経周期前半に子宮内膜が低エコーとなった時期の経腟超音波画像で、子宮内膜粘膜界面(黄矢印)がポリープ(青矢印)により明瞭に中断されている所見を示しています。
【Figure 3】高エコー子宮内膜における微細な中断粘膜サイン
高エコー子宮内膜を背景に、微細な子宮内膜ポリープ(青矢印)が描出されている画像です。高エコーの粘膜(黄矢印)を辿っていくとポリープのレベルで限局的に中断されている所見を示しています。
【Figure 4】明らかな腫瘤を伴わない2cmポリープの中断粘膜サイン
病理学的に2cmのポリープと確認された症例です。
– A:グレースケール経腟超音波画像で、明らかな腫瘤としては描出されないものの、粘膜(黄矢印)が限局的に中断(青矢印)されている所見
– B:同一症例のカラードプラ画像で、子宮内膜内の血管が粘膜の限局的中断点(黄矢印)で終わる所見
【Figure 5】偽陽性例(増殖期内膜のみ)
高エコー腫瘤(青矢印)が粘膜線(黄矢印)を限局的に中断するように描出されていますが、盲目的子宮内膜生検の病理組織検査では増殖期内膜のみが認められ、ポリープは同定されなかった症例です。
【Figure 6】偽陽性例(粘膜下筋腫)
– A:高エコー腫瘤(青矢印)が粘膜線(黄矢印)を限局的に中断するように見える経腟超音波画像
– B:同一症例の子宮T2強調MRI画像で、当該腫瘤(青矢印)が粘膜下筋腫であることが判明
【Figure 7】偽陰性例
等エコー腫瘤(青矢印)が粘膜線(黄矢印)に接して粘膜を歪曲しているものの、中断はしていない症例です。病理組織検査ではポリープと確認されており、中断粘膜サインの感度には限界があり(59%)、本サインのみで全てのポリープを検出できるわけではないことを示す画像です。
文責:川井清考(WFC group CEO)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。