一般不妊

2022.02.04

慢性子宮内膜炎あったら妊娠・出産できないの?(J Assist Reprod Genet. 2022)

はじめに

不妊で悩んでいる女性の全員が明確な不妊原因が見つかるわけではありません。体外受精に進んで良好胚を戻しても着床しないことが続くようであれば、重箱の隅をつつくような原因精査は必要だと思いますが、不妊検査を始めたばかりの方に、どこまで細かい検査を強いるかは悩ましいところです。
その中でも、患者様の方から「調べてほしい」と多く言われるのは慢性子宮内膜炎です。組織をとっての検査ですし、免疫染色をすることが一般的なので自費検査となります。また組織を取る時期により一周期、妊娠治療はお休みになるわけですから、検査を繰り返すことを一般不妊のうちは明確な子宮鏡などで異常がない限りは必要ないのではないかと考えています。軽度の慢性子宮内膜炎であれば、治療しなくても妊娠・出産できるんだよという報告をご紹介いたします。

ポイント

軽度の慢性子宮内膜炎は不妊者の半数に存在しますが、反復着床不全などの特殊な状況を除いて、着床率、臨床妊娠率、流産率、出生率に影響を与えない可能性が高く、軽度例では抗生剤治療を要しないと考えられます。

引用文献

N S Herlihy, et al. J Assist Reprod Genet. 2022. DOI: 10.1007/s10815-021-02374-z

論文内容

2018年8月から2019年12月の間に実施された前向き多施設共同研究です。
体外受精を実施した80名の女性から体外受精の卵巣刺激中に子宮内膜組織を採取し、CD138免疫染色を実施し形質細胞を同定しました。スライドを20倍に拡大し、ランダムに10枚の画像を撮影し評価しました。3名の病理医が各組織の形質細胞を評価しました。研究参加者は着床前検査を実施し正倍数性胚の凍結融解胚盤胞移植を実施しました。

結果

症例の49%が10 HPFあたり1個以上のCD138陽性細胞を有し、11%が10 HPFあたり5個以上のCD138陽性細胞を有し、4%が10 HPFで10個以上のCD138陽性細胞を有していました。出産した方としなかった方の間に有病率の差はありませんでした。10 HPFあたり1個、5個、10個のCD138陽性細胞でカットオフとして検討した場合、着床率、臨床妊娠率、流産率、出生率に差はありませんでした。

私見

軽度の慢性子宮内膜炎は、不妊者の半数に存在し反復着床不全などの特殊な状況を除いて、着床、臨床妊娠、臨床妊娠喪失、出生率の原因である可能性が少ないという結論となっていて、私も同様の見解です。
この論文では、前向き多施設共同研究で質は高いのですが、最初のpower analysisの時の検出力のときに80症例での検証を組んでいたため、80症例の中では10 HPFで5個以上のCD138陽性細胞症例は9症例しかなく、少し母集団が少なめであるのが、慢性子宮内膜炎が高度であった場合も着床、臨床妊娠、臨床妊娠喪失、出生率に統計的に差がつかなかった理由なんだと思います。
この報告は今までの報告と違わず、軽度の慢性子宮内膜炎(10HPF 5個未満)であれば抗生剤治療を要しないと理解して良いのだと思います。
形質細胞は正常に分娩できる方にも子宮内膜に存在することがあります。
Dumoulinら(BJOG. 1951)は、分娩後の健康な女性の子宮内膜に形質細胞が存在することを示していますし、McQueenら(Fertil Steril. 2021)も健常対照者の31%が10HPFあたり少なくとも1つの形質細胞を有することを報告しています。不妊原因を考えるとき、どうしても「木を見て森を見ず」になりがちです。主治医と不妊原因・今後の治療を総合的に判断する必要があるのだと思います。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 子宮鏡

# 反復着床不全(RIF)

# 慢性子宮内膜炎

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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