はじめに
妊娠していない女性でもhCGが上昇していることがあり、その際には様々な鑑別を考えなくてはなりません。
ポイント
非妊娠女性のhCG上昇の原因には、hCG産生腫瘍、下垂体からの生理的分泌、測定の偽陽性などがあり、閉経後女性や早発閉経の患者では特に注意が必要です。ホルモン補充療法により下垂体からのhCG産生を抑制できることが報告されています。
引用文献
1. Cole LA, et al. N Engl J Med. 2007
2. Matsuura S, et al. Nature. 1980
3. Cole LA, et al. Am J Obstet Gynecol. 2008
4. Soni S, et al. Indian J Nephrol. 2013
5. Snyder JA, et al. Clin Chem. 2005
6. Suginami H, et al. J Clin Endocrinol Metab. 1982
まとめ
非妊娠女性のhCG上昇の原因としては、卵巣腫瘍を代表とするhCG産生腫瘍のほか、腟がん、腎臓がん、前立腺がん、消化器がん、乳がん、肺がんなどの他の非婦人科悪性腫瘍における腫瘍随伴症候群としても報告されています。また、測定の偽陽性も考えられます。
hCG産生のもう一つの原因は、閉経前または閉経後の女性における下垂体です。卵巣ステロイドホルモン合成が減少し、GnRHの負のフィードバック制御が解除されることが原因と考えられています。
Snyderらは、非妊娠女性のhCG濃度が年齢とともに上昇し、非妊娠の閉経前・閉経後グループでは偽陽性のhCG上昇を引き起こすことを報告しており、閉経後女性の血清hCG正常値の上限を14.0 IU/Lとすることを推奨しています。
さらに、閉経後女性の下垂体の免疫染色によりhCGが局在していることも確認されています。28名の非妊娠女性の低値hCG陽性患者(平均9.5±6.5mIU、範囲2.1~32.0)を対象とした症例報告では、ホルモン補充療法を最低2週間実施すると下垂体hCG産生を抑制することが報告されています。この治療を実施した18名全員のhCGレベルが2mIU未満に抑制されました。
私見
この報告では29歳、35歳、39歳の若年女性の原発性無月経または外科的卵巣摘出術による早発閉経の患者も含まれていたため、私たちの診療でも遭遇する可能性があるかもしれません。
今回、非妊娠女性のhCG分泌をあえてテーマに挙げたのは、卵巣刺激に関わる薬を理解する上で必須な知識だからです。また改めてご紹介いたします。
文責:川井清考(WFC group CEO)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。