はじめに
ホルモン調整周期と排卵周期の内膜調整による凍結融解胚移植は、妊娠成績には差がないという発表がある一方、排卵周期での凍結融解胚移植は、より生理的であり、少ない投薬量でおさまることから見直される傾向にあります。排卵周期凍結融解胚移植において、hCGトリガーのタイミングによる妊娠成績をしめした報告をご紹介いたします。
ポイント
排卵周期凍結融解胚移植において、hCGトリガーのタイミング(LH値15IU/L未満から40IU/L以上まで)による妊娠成績に有意差はなく、来院時間を考慮しながらhCGトリガー時期を柔軟に設定できる可能性が示唆された。
引用文献
Semra Kahraman et al. J Assist Reprod Genet. 2020. DOI: 10.1007/s10815-020-01974-5
論文内容
排卵周期での凍結融解胚移植を受ける患者に対してhCGトリガーのタイミングに最適な時期は、文献上でコンセンサスが得られていません。この報告では、排卵周期胚移植の異なるLHレベルでのhCGトリガーの臨床結果を比較しています。後方視的研究は、イスタンブールの単一体外受精施設で実施されました。排卵周期1076名1163周期の排卵周期胚移植を対象としました。RIF患者やPGT-A実施患者は含まれていません。トリガー時期のLH値を上昇開始(15IU/L)からピーク時(>40IU/L)までのLH値を4群に分けて分析しました。hCG投与前日のLH15IU/L未満:A群(n=287)、hCG投与日のLH15~24.9IU/L:B群(n=245)、LH25~39.9IU/L:C群(n=253)およびLH40IU/L以上:D群(n=383)としました。
結果
排卵周期胚移植のサブグループ解析では、hCGトリガー日のLHレベルが異なる患者において、着床率、臨床的妊娠率、継続妊娠率、流産率に有意な差はありませんでした。
私見
卵胞サイズが15mmを越えると24時間毎にLHとE2を測定し、一定の基準を決めてhCGトリガーの時間を夕方に設定しています。戻す胚盤胞のグレードを胚盤胞のガードナー分類3BB以上に統一していますし、黄体補充をhCG投与2日後、hCG投与後6日に胚移植を行うことで、排卵周期の時間的なばらつきをできるかぎり最小にしています。
私たちも現在、ホルモン調整周期から排卵周期凍結融解胚移植の場合は、患者様の来院時間が可能であれば早い周期でおすすめすることがあります。今後、時間のばらつきをなくす意味でも導入を検討したいと思います。
文責:川井清考(WFC group CEO)
お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。