男性不妊

2022.05.26

抗うつ薬と精子への影響(ヒト・動物実験含めて)

はじめに

抗うつ剤を服用されている方は、うつ症状が安定していることが何よりも大事ですので、ご自身の判断で薬剤服用を中止したり、減量したりはなさらないでください。心療内科の先生と連携をとりながら治療にあたることが重要だと思います。

ポイント

レビューで報告されている抗うつ薬の影響をまとめました。SSRI、SNRI、三環系抗うつ薬など薬剤により精子への影響が異なることが示されています。

引用文献

Lauren A Beeder, et al. Int J Urol. 2020. DOI: 10.1111/iju.14111.

論文内容

SSRIs

  • フルオキセチン (英: Fluoxetine、商品名 プロザック®)  
    ラット:精子形成、精子濃度・運動率の低下  
    ラット:妊娠率及び着床率の低下、生殖器官重量の減少  
  • フルボキサミン (英: Fluvoxamine、商品名 デプロメール®、ルボックス®)  
    ラット:精子濃度・運動率の低下、異常形態精子の増加  
    ラット:精巣の酸化ストレスとアポトーシスの増加 
    FSH、LH、テストステロン、エストロゲンの減少 
  • セルトラリン(英: Sertraline、商品名 ジェイゾロフト®) 
    ヒト症例報告:精子濃度、運動率の低下 ラット 精巣の変性、酸化ストレス 
    ヒト前向き研究:精子数の減少、異常形態精子の増加、精子DNA断片化率の増加 
    ラット:精子DNA断片化率の増加と異常形態精子の増加、精子数の減少 
    ラット:精巣の変性、酸化ストレス 
  • シタロプラム(英: Citalopram、商品名 セレクサ®) 
    ヒト症例報告:精子数および運動率の減少、異常形態精子の増加  
    ラット:精子DNA 鎖切断および酸化ストレスの増加、異常形態精子の増加
    ラット:精嚢の大きさ減少、精細管の容量減少 
  • パロキセチン (英: Paroxetine、商品名:パキシル®) 
    ヒト前向き研究:精子DNA 断片化率の増加 
  • エスシタロプラム(英: Escitalopram、商品名:レクサプロ®)  
    ヒト前向き研究:精子濃度・運動率の低下、異常形態精子の増加 

SNRIs

  • ベンラファキシン(英: Venlafaxine、商品名:イフェクサー®) 
    ヒト前向き研究:正常形態率と精子生存率の改善、非進行性運動率の増加 
  • デュロキセチン(英: Duloxetine、商品名:サインバルタ®) 
    ヒト前向き研究:精液所見・精子DNA断片化率・血清ホルモン値に影響なし 

三環系抗うつ薬

  • アミトリプチリン(英: Amitriptyline、商品名トリプタノール®) 
    ヒト前向き研究(複数あり): 
    ①射精量、精子数および正常形態精子の増加 
    ②精子濃度および生存率の減少 
    ③精子数および正常な形態の減少 
    ④生殖細胞突然変異の増加 

モノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)

  • セレギリン(英: Selegiline、商品名:エフピー® ) 
    ラット:精子数および生存率の増加
    ラット:精巣質量の増加 

非定型抗うつ薬(三環系、四環系、SSRI, SNRI 以外の抗うつ剤)

  • トラゾドン(英: Trazodone、商品名:デジレル® 、レスリン® ) 
    ラット:精子濃度、運動率、正常形態精子の低下、精子DNA断片化率の増加 

私見

抗うつ薬は種類により精子への影響が異なることが報告されています。特にSSRIでは精子濃度や運動率の低下、DNA断片化率の増加などが報告されています。一方、SNRIの一部では影響が少ないとの報告もあります。ただし、精神状態の安定が最優先ですので、挙児希望がある場合は精神科医と連携しながら治療方針を検討することが重要です。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 精子DNA損傷検査

# 精液検査

# 影響する薬剤など

# 精液所見

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

抗酸化サプリは妊娠率を上げる?大規模臨床試験の結果(JAMA Network Open, 2025)

2025.10.25

プロバイオティクスで精索静脈瘤手術の効果が向上(J Res. Med. Sci., 2023)

2025.09.27

シンバイオティクスで精子の質改善 (Int J Reprod BioMed、2021)

2025.09.20

抗酸化サプリメント高用量摂取のマウス精子を用いたリスク検証(F S Sci. 2025)

2025.07.04

組み換え型hCG製剤投与によるマイクロTESE成績向上の試み 

2024.07.13

男性不妊の人気記事

我が国の統計からの興味深い情報のご紹介~男性は何歳まで子供を作ることができるのか~

2024.03.14

禁欲期間が長いと妊活にはよくないです

2024.02.10

射精から時間が経つと精液検査所見は悪化する?

2025.11.01

5年で総運動精子数が半減? 男性不妊における経時的変化 (Andrology, 2025)

日本から男性妊活用抗酸化サプリメントの最新エビデンスです 

今月の人気記事

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

高年齢の不妊治療で注目されるPGT-A(2025年日本の細則改訂について)

2025.11.10

我が国の統計からの興味深い情報のご紹介~男性は何歳まで子供を作ることができるのか~

2023.06.03

PCOS女性の妊娠前・初期メトホルミンが妊娠転帰に与える影響(Am J Obstet Gynecol. 2025)

2025.12.22