治療予後・その他

2026.02.02

妊娠中の経口降圧薬治療(Am J Obstet Gynecol. 2025)

はじめに

妊娠高血圧症候群は妊娠の最大10%に認められます。今回、妊娠高血圧症候群における経口降圧薬治療(メチルドパ、ラベタロール、ニフェジピン)の母体および胎児・新生児の罹患率と死亡率への影響を検討したシステマティックレビューとネットワークメタアナリシスをご紹介いたします。

ポイント

ラベタロールはニフェジピンと比較して妊娠高血圧腎症と早産の発生率が低くなりましたが、重症高血圧に関しては3剤間で有意差は認められませんでした。

引用文献

Rosalie J. Hup, et al. Am J Obstet Gynecol. 2025 Oct;233(4):250-262. doi: 10.1016/j.ajog.2025.04.011.

論文内容

妊娠高血圧症候群の治療において、経口降圧薬(メチルドパ、ラベタロール、ニフェジピン)による治療が母体または胎児・新生児の罹患率および死亡率に及ぼす影響を明らかにすることを目的としたシステマティックレビューおよびネットワークメタアナリシスです。2023年8月25日にPubMed/Medline、Embase、CENTRALで電子検索を実施し、妊娠高血圧症において経口降圧薬(メチルドパ、ラベタロール、ニフェジピン)またはプラセボ・無治療での周産期アウトカムを報告したRCTを同定しました。

結果

合計23試験(3989名の女性)が全体的に低~中等度の質でネットワークメタアナリシスに組み込まれました。
重症高血圧の発生率に関しては、プラセボ・無治療と比較して、ラベタロールとメチルドパは有意に減少させました(8研究を含む、RR 0.20、95%CI 0.09-0.48およびRR 0.44、95%CI 0.20-0.99)。
ネットワークメタアナリシスにおいて、ラベタロール vs ニフェジピンでは妊娠高血圧腎症(RR 0.50、95%CI 0.28-0.87、15研究)および早産(RR 0.68、95%CI 0.52-0.90、14研究)の減少と関連していました。
出生体重に関しては、20研究3254新生児を含むネットワークで解析されました。SGAのリスクは11研究1761新生児で報告され、LBWのリスクは3研究635新生児で報告されました。ネットワークメタアナリシスでは、すべての比較において差は認められず、経口降圧薬間またはコントロール群と比較してSGAやLBWの発生に差は認められませんでした。
妊娠高血圧腎症については14研究1805名の女性で報告されました。ラベタロールとニフェジピンの比較では有意な差が認められました(RR 0.50、95%CI 0.28-0.87)。他の比較では妊娠高血圧腎症の発生に差は認められませんでした。HELLP症候群は3研究1184名の女性で0.6%の発生率、脳卒中・脳出血および肝出血は3研究で報告され、1例の脳卒中が記載されました。子癇は6研究で1.5%の有病率でした。母体死亡は8研究1759名の女性で1名がコントロール群に記載されました。
妊娠37週未満の早産は15研究2311新生児で報告され、34週未満の早産は4研究598新生児で報告されました。妊娠37週未満および34週未満の早産のいずれについても、経口薬とコントロール群の比較で効果は認められませんでした。しかし、ネットワークメタアナリシスでは、ラベタロールはニフェジピンと比較して37週未満の早産の発生率が統計学的に有意に低いことが示されました(RR 0.68、95%CI 0.52-0.90)。
在胎週数は17研究1703新生児で報告されました。ネットワークメタアナリシスでは比較間で平均差に統計学的有意差は認められませんでした。
5分後Apgarスコア7未満のリスクは4研究1535人の新生児で報告され、ネットワークメタアナリシスではすべての比較において差は認められませんでした。胎児・新生児死亡は20研究3871新生児で報告され、このネットワークメタアナリシスでも差は認められませんでした。

私見

一部の研究では、ラベタロールを含むβ遮断薬の使用が出生体重低下、SGA児や子宮内胎児発育不全(FGR)リスク増加と関連する可能性が示唆されていましたが、本研究ではメチルドパ、ラベタロール、ニフェジピンを相互またはプラセボ・無治療と比較した場合、いずれの薬剤も出生体重との関連は認められませんでした。
今回の報告のディスカッションでも書かれてありましたが、降圧剤を使用する上で蛋白尿をひきおこし、医原性に妊娠高血圧腎症が早くついてしまったり、結果として早産につながることが懸念されています。血圧をどこまで調整するか、降圧薬使用時の蛋白尿をどうひょうかするか、まだまだ検討すべき事項が山積みなのだなと実感しました。
生殖医療の立場からは、やはり妊娠高血圧症候群予防に徹する、これが大事なことなんだと思います。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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# 影響する薬剤など

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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