
はじめに
新鮮胚移植周期を受ける女性における季節と妊娠予後との間の潜在的な関連性については議論が分かれています。新鮮胚移植周期後の季節と妊娠予後との間に関連性が存在するかどうかを明らかにし、季節的考慮を治療計画に統合すべきかどうかについて検証したメタアナリシスをご紹介します。
ポイント
季節変動は新鮮胚移植周期後の妊娠予後との間に有意な関連を示さず、特定の気候区分での観察された変動は多因子的影響による可能性があります。
引用文献
Deng Q, et al. Front Public Health. 2025 Sep 11;13:1660982. doi: 10.3389/fpubh.2025.1660982.
論文内容
新鮮胚移植周期における季節と妊娠予後との間に関連性が存在するかどうかを明らかにすることです。PRISMA ガイドラインに準拠したシステマティックレビューで、7つの主要な電子データベースを横断的に検索しました。データ統合には固定効果モデルを採用し、サブグループ解析はケッペン気候区分に従って実施されました。組み入れられた研究のバイアスリスクはNewcastle-Ottawa Scale(NOS)を用いて評価しました。関連性はOR(オッズ比)と対応する95%CIで報告し、異質性はI²統計量で定量化しました。
結果
19件のレトロスペクティブ研究を組み入れ、159,696件の新鮮胚移植周期が含まれました。全体として、季節と臨床妊娠率または出生率との間に有意な関連は認められませんでした。しかしながら、サブグループ解析では気候特異的な変動が明らかになりました:Cwa(温暖湿潤気候)では、夏移植での出生率が冬移植と比較して有意に高くなりました(OR=1.05; 95%CI、1.01–1.10; I²=0%、P heterogeneity<0.05)。Dfb(温暖夏季湿潤大陸性気候)では、春移植の出生率が夏移植と比較して有意に高くなりました(OR=1.07; 95%CI、1.01–1.14)。春と夏、春と秋、春と冬、夏と秋、夏と冬、秋と冬の移植間の臨床妊娠率の比較では、全体解析において統計学的有意差は認められませんでした(すべてのI²=0%、P-heterogeneity>0.05)。出生率についても同様に、全体解析では季節間に統計学的有意差は認められませんでした。
私見
過去の仮説では、日照時間と関係する血清ビタミンD濃度、メラトニンなどが影響をあたえるのではないか、気温が直接影響するのではないか、などの意見もありますし、思いの外影響が大きいとかんがえられているのは社会文化的因子(正月やお祭り、年度の変わり目)です。
確立された胚移植プロトコルと厳格なラボ環境管理の下では、配偶子処理、胚培養、選択などの重要な手順に対する季節変動の潜在的影響を効果的に最小化することができますので、患者様に聞かれた時は新鮮胚移植は季節性成績変化はほぼないと説明してよいかなと考えています。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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