
はじめに
胚盤胞移植は初期胚移植と比較して妊娠率向上が期待される一方、周産期予後への影響が懸念されています。フランス全国データベースを用いて、新鮮胚盤胞移植後の単胎児における周産期・小児期予後を評価した報告をご紹介します。
ポイント
新鮮胚盤胞移植は前置胎盤、NICU入院、乳幼児期の心奇形リスクをやや増加させる一方、妊娠糖尿病、SGA、筋骨格系四肢奇形リスクは低下し、全体的な先天奇形発生率は初期胚移植と同等でした。
引用文献
Patricia Fauque, et al. Hum Reprod. 2025;00(00):1-17. doi: 10.1093/humrep/deaf245.
論文内容
Extended embryo culture(EEC)が産科的、周産期的、小児期の健康合併症リスク増加と関連するかを検討した全国縦断コホート研究です。2014年から2019年にフランスで新鮮胚移植により出生した単胎児41,315例(day-2/3群25,816例、day-5/6群15,499例)を対象とし、最長8年間追跡しました。フランス国民健康システム(SNDS)と国立生物医学機関(NBA)のデータを連結し、母体・父体・治療関連因子で調整した多変量ロジスティック回帰およびCox回帰分析を実施しました。
結果
ほとんどの結果は両群間で同等でしたが、day-5/6群では前置胎盤(aOR, 1.16; 95%CI, 1.02–1.30)、NICU入院(aOR, 1.16; 95%CI, 1.05–1.29)、3歳時点での心奇形(aHR, 1.78; 95%CI, 1.21–2.60)のリスクが増加していました。
一方、妊娠糖尿病(aOR, 0.94; 95%CI, 0.88–1.00; P=0.041)およびSGA(aOR, 0.94; 95%CI, 0.88–1.00, P=0.039)のリスクは低下し、筋骨格系四肢奇形(aHR, 0.63; 95%CI, 0.42–0.97)のリスクも低下しました。筋骨格系四肢奇形リスクの低下は7歳まで持続し、年齢とともにさらに顕著になりました(6歳以降でaHR 0.13-0.36)。
全体的な主要先天奇形の発生率は両群間で差がありませんでした(day-2/3群2.01% vs day-5/6群1.97%, P=0.786)。
両群間で差がなかった主要な評価項目として、妊娠高血圧症候群(day-2/3群2.5% vs day-5/6群2.3%)、常位胎盤早期剝離(0.6% vs 0.8%)、分娩時・産後出血(5.5% vs 5.8%)、帝王切開率(25.2% vs 25.4%)、早産率(7.4% vs 7.8%)、低出生体重児(8.4% vs 8.3%)、LGA(8.7% vs 9.1%)、新生児死亡率(0.2% vs 0.2%)、7日以上のNICU入院(1.8% vs 2.0%)が挙げられます。また、3歳までの入院経験(24.9% vs 25.1%)、手術介入(6.6% vs 7.1%)、泌尿器系・消化器系・神経系・呼吸器系・眼・顔面・遺伝性などの各種先天奇形、複数の主要先天奇形の合併(0.25% vs 0.22%)についても両群間で有意差を認めませんでした。
私見
新鮮胚移植に限定したデータなので比較しやすいですね。
前置胎盤リスクの増加は、他の大規模レジストリ研究とも一致しています(Ginström Ernstad et al. 2016: Spangmose et al. 2020: Landsverk et al. 2025)。
最近のRaja et al.(2023)の同胞比較研究でも、新鮮胚盤胞移植後に先天奇形リスクが低下する傾向が報告されています(aRR, 0.52; 95%CI, 0.28, 0.97)。今回の同じ中胚葉由来に属する心奇形リスクの増加(1.78倍)と筋骨格系四肢奇形リスクの低下(0.63倍)という相反する結果は今後の報告を注視すべき内容だと考えています。Fig2の解釈は心奇形は早い段階で同定されることが多いため、統計学的限界としてこのような結果にいたるのではと説明されていますが、本当のところは解釈がむずかしいですね。全体的な先天奇形率は同等であり、いずれの方法も過度な懸念は不要と考えられます。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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