一般不妊

2021.12.15

不妊検査の推奨項目(総論・排卵機能・卵巣予備能:アメリカ生殖医学会)

はじめに

不妊検査は病歴や身体的所見がない場合、35歳未満女性では不妊期間12ヵ月、35歳以上女性では不妊期間6ヵ月、40歳以上女性では不妊期間関係なく行うことを推奨されています。アメリカ生殖医学会が推奨している初期不妊検査をご紹介いたします。

ポイント

不妊検査は網羅的に行うのではなく、経済的コストを考慮しつつバランスよく実施する必要があります。女性だけではなく、男性パートナーにも不妊評価を早めに実施することが推奨されています。

引用文献

Practice Committee of the American Society for Reproductive Medicine.

Fertil Steril. 2021. PMID: 34607703

論文内容

不妊に影響する病歴や身体所見は以下のようなものが候補に挙げられます。 ①不規則な月経周期、月経周期が25日未満と短い場合、月経と月経の間に性器出血がある場合。無月経や月経周期が長い場合(39日以上) ②子宮・卵管・腹膜に疾患が疑われる場合や内膜症がある場合 ③男性不妊症が疑われる場合 ④性交障害などの性機能障害を認める場合 ⑤卵巣予備能が低下しやすい先天・後天素因がある場合(例:化学療法、放射線療法、FMR1 mutationなど)

その他、不育症の着床前スクリーニング目的で体外受精を行う場合、トランスジェンダー間での挙児希望のための体外受精の場合などが挙げられています。

男性パートナーにも不妊評価(病歴や身体的所見を含めた問診、少なくとも1回の精液検査)を早めに実施することを推奨しています。

排卵機能

排卵障害は不妊症カップルの15~40%に認められるとしています。排卵障害の一般的な原因には、PCOS、肥満、閉経付近、体重増加または減少、過度の運動、甲状腺機能異常、高プロラクチン血症などがあります。

①月経歴(問診) ほとんどの女性の月経周期は規則的(21~35日)で予測可能であることがほとんどです。ある程度のばらつきは異常とみなしません。1,000周期以上の研究では、5日以上の月経間隔の変動は、6ヶ月以内で56%、1年間で75%に認められるようです。

Ovarian cystectomy versus laser vaporization in the treatment of ovarian endometriomas: a randomized clinical trial with a five-year follow-up. Fertil Steril. 2011;96(1):251–254.

また、定期的に月経のある女性に稀に起こる無排卵周期は1~14%とされています。

Association between endometriosis and gynecological cancers: a critical review of the literature. Arch Gynecol Obstet. 2020;301(2):355–367. The role of fertility preservation in patients with endometriosis. J Assist Reprod Genet. 2016;33(3):317–323.

②黄体期のプロゲステロン 血清プロゲステロン測定値は、信頼性の高い客観的な排卵の有無の指標となります。 プロゲステロン濃度が3ng/mL以上であれば、排卵後を間違いなく意味します。しかし、プロゲステロン値で排卵を確認することはできますが、黄体期の質(黄体機能不全)を評価することはできません。

③排卵検査薬 様々な市販の「排卵検査薬」は尿中LHを測定しており、検査陽性になると1~2日以内に排卵が起こることを特定することができます。特に昼間または夕方の尿検体で検査を行うと、血清LHのピークとよく相関するとされています。PCOS患者では、基礎LH値が常に高値であることがあるため排卵検査薬(尿中LH)が常に偽陽性となることがあります。排卵検査薬はメーカーにより精度、使いやすさ、信頼性が異なるため自身にあったものを選ぶことを推奨いたします。

④経腟超音波検査 経腟超音波検査は、卵巣予備能、付属器や子宮の病変を評価するのに有効な手段ですが、排卵に関しては卵胞発育・個数、排卵する側、排卵の有無を評価することができます。

⑤基礎体温 基礎体温は排卵障害を予測する安価な方法ですが、信頼性に欠けることが多いです。排卵が起こっている女性でも、一定数は二相性に見えないこともあります。 黄体時期(高温相)が短い場合(10日未満)は黄体機能不全を疑うことや、基礎体温が高温相に移行する7日目からは妊娠しやすい期間であることからタイミングがあっていたかを確かめることができますが、後で振り返ることができるだけですので、今回のcommittee opinionでは推奨検査とはされていません。

⑥子宮内膜生検 子宮内膜生検は、歴史的には黄体期の分泌性子宮内膜の存在を組織学的に評価するために使用されていましたが、現在では侵襲性の観点からも、正確さと精度の観点からも推奨されていません。 (内膜炎精査を否定するわけではなく排卵評価のために行うことの非推奨です。)

⑦ホルモン検査 無月経や月経周期が長い場合(39日以上)は原因を精査することが大事です。 血清TSH濃度は甲状腺障害による排卵障害を、プロラクチン(PRL)はルーチン検査としては推奨されていませんが、乳汁分泌や排卵障害があった場合には測定することが好ましいとされています。 無月経の女性では、血清FSHおよびエストラジオールの測定により卵巣機能低下による無月経(FSH高値、エストラジオール低値)と、外因性ゴナドトロピン刺激を必要とする視床下部性無月経の女性(FSH低値または正常値、エストラジオール低値)を区別することができます。排卵障害がありFSHおよびエストラジオールレベルが正常な女性ではPCOSの評価が必要となります。アンドロゲン過剰の臨床的徴候がある女性では、先天性副腎過形成21水酸化酵素欠損症の追加スクリーニングも検討していく必要があります。

卵巣予備能

卵巣予備能は卵子の質ではなく数を示す指標です。 卵巣予備能が低下すると定期的に月経があっても同じ卵巣刺激を行っても回収卵子数が少なくなります。妊娠に対して最も影響を与えるのは女性年齢で、あくまで卵巣予備能検査は年齢や他の不妊原因をふまえて治療方針をきめていくうえでのオプション指標となります。卵巣予備能が低いからといって、妊娠できない、あるいは不妊症であるとは限りません。 卵巣予備能検査には卵胞期FSH+エストラジオール(一緒に測定)、AMH(時期を問わず)、胞状卵胞数と卵巣容積などがあります。インヒビンBとクロミフェンチャレンジテストは、卵巣予備能を評価するのに有用な検査ではなく推奨されません。

なお特別な意図がない限り、一般不妊検査の間にする必要がない検査というものも定義されています。 ①原因不明不妊に対する腹腔鏡検査 ②意図のない精子機能検査(例:DNA断片化検査) ③性交後の検査 ④血栓素因検査 ⑤免疫検査 ⑥夫婦染色体検査 ⑦内膜日付診としての子宮内膜組織診 ⑧プロラクチンやFSH、LH、エストラジオール、プロゲステロン 

私見

国内の不妊一次スクリーニング検査の推奨とはやや異なります。不妊検査が保険か自費検査か、後者の場合は価格設定の問題、クリニックへの受診頻度、不妊クリニックにかかる原因や年齢層など様々な要因がありますので、国内でも同様の方法で行うべきかどうか、正解はありません。 ただし、日々患者様に検査を提供する意義と目的は明確に定めて行うべきだと考えています。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 黄体機能不全

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# 卵巣予備能、AMH

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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