体外受精

2022.12.02

胚移植前の睡眠の質は胚移植成績に影響する?(Fertil Steril. 2022)

はじめに

睡眠の質や睡眠障害は、月経周期、妊娠、更年期など女性の健康との関連が指摘されるようになってきました。睡眠障害が生物学的なメカニズムで妊孕性を低下させるというのは信憑性が高そうですが、まだまだ限られた報告しかありません。
過去にもブログでとりあげてきましたが、今回はアジアからの睡眠と体外受精胚移植成績を比較した報告をご紹介いたします。

ポイント

睡眠の質は体外受精胚移植成績(臨床妊娠率および出生率)と正の相関がありました。睡眠の質の低下は、35歳未満の女性で体外受精に著明に影響を与えていました。

引用文献

Zheng Liu, et al. Fertil Steril. 2022 Nov 23; S0015-0282(22)01965-3. doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.10.015.

論文紹介

2019年7月から2020年7月までに体外受精胚移植を行う60-90日前にアンケート調査を実施しました。3,183人を対象とした前向き観察コホート研究です。
睡眠の質、睡眠時間、睡眠タイプなどに関する情報をアンケートにて胚移植前に収集しました。睡眠の質は、カットポイントを5としたピッツバーグ睡眠質指数(PSQI)により定量化(PSQI >5で睡眠質不良 vs. PSQI ≤5で睡眠質良好)。1週間の平均睡眠時間を算出し、5つのグループ(7時間未満、7-8時間、8-9時間、9-10時間、>10時間)に分けました。睡眠タイプの定義では、睡眠の中間点が午前2時30分より早い女性をmorningness type、午前3時30分より遅い女性をeveningness type、残りをintermediate typeとしました。評価項目は臨床妊娠率および出生率としました。 

結果

睡眠質不良群と比較して、睡眠質良好群は、臨床妊娠率(69.3% vs. 65.1%)および出生率(50.5% vs. 45.7%)が高いことが示されました。交絡因子を調整した後、睡眠質良好群は、臨床妊娠率(RR、1.07;95% CI、1.01-1.13)および出生率(RR、1.12;95% CI、1.02-1.23)がより高いことが示されました。朝型の女性は、臨床妊娠率および出生率が最も低く、流産率が最も高くなりました。睡眠時間は、いずれの結果とも関連がありませんでした。層別解析では、睡眠の質と臨床妊娠率および出生率との正の相関は、35歳未満の女性または新鮮胚移植を受けた女性においてのみという結果でした。 

私見

睡眠と妊孕性の報告が立て続けに出てきます。結果はまだ、一貫性がないですが、適度な睡眠は好ましいことは間違いなさそうです。今後も注視していきたいと思います。 

  • 睡眠障害は体外受精治療中におきやすい  
    M.E. Pavone, et al. Fertil Steril. 2013
    C.A. Goldstein, et al.  Sleep Med. 2017
    Y.H. Lin, et al. J Clin Nurs. 2016.  
  • 卵巣刺激反応不良と睡眠障害が関係する
    Llaneza, D., et al. Fertil Steril. 2017
    L. Mínguez-Alarcón, et al. Occup Environ Med. 2017  
  • 睡眠時間、睡眠の質は早産リスクと関連する
    L. Wang, et al. BMC Preg Childbirth. 2020  
  • 夜勤と夜更かしの頻度が流産リスクの上昇と関連する
    (今回の結論と違いますが、この論文では一般集団を対象、今回の研究は胚移植前60-90日前の体外受精患者の違いがあります)
     G. Xu, et al. Fertil Steril. 2014  

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女性の睡眠時間と妊娠のしやすさ(論文紹介)
睡眠特徴はART治療成績と関連する?(Hum Reprod. 2022)
男性の睡眠時間と妊娠のしやすさ(Fertil Steril. 2018)
睡眠と精液検査① (論文紹介)
睡眠と精液検査② (論文紹介)
睡眠と精液検査③ (論文紹介) 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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