治療予後・その他

2023.08.03

不妊女性はガンになりやすいの?(Fertil Steril. 2023)

はじめに

不妊治療とがんの関係は以前ご紹介いたしましたが、不妊症自体がガンリスク上昇と関連するのでしょうか。

ポイント

不妊であること自体、女性にとって、肥満に関連した生殖器癌(閉経後乳がん、子宮体がん、卵巣がん)の発症リスクと関連している可能性があります。

引用文献

Siwen Wang, et al. Fertil Steril. 2023 Jul;120(1):134-142. doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.02.028.

論文内容

1989年にNurses’ Health Study IIに登録した103,080名(25〜42歳)の看護師を対象に、不妊症女性とそうでない女性を登録時、それから2年ごとに追跡調査を行い、癌の発症頻度について検討した前向きコホート研究です。
肥満関連がん(大腸がん、胆嚢がん、腎臓がん、多発性骨髄腫、甲状腺がん、膵臓がん、食道がん、胃がん、肝臓がん、子宮体がん、卵巣がん、閉経後乳がん)または非肥満関連がん(その他すべてのがん)に分類し、Cox比例ハザードモデルにて、不妊とがんとの関連についてハザード比および95%信頼区間を推定しました。

結果

不妊でない女性76,872名(34.8歳)、不妊女性26,208名(34.9歳)にて2,149,385観察人年(不妊でない女性1,535,572人年、不妊女性613,813人年)を調査し、6,925件(不妊でない女性4,822件、不妊女性2,103件)の浸潤性がんが報告されました。BMIおよび他のリスク因子で調整した後、不妊女性は、妊娠歴が不妊歴のない有胎妊娠女性よりもがん発症リスクが高くなりました(HR、1.07;95%CI、1.02-1.13)。この関連は、肥満関連がん(HR、1.13;95%CI、1.05-1.22; vs. 非肥満関連がん、HR、0.98;95%CI、0.91-1.06)であり、特に肥満関連生殖器がん(閉経後乳がん、子宮体がん、卵巣がん;HR、1.17;95%CI、1.06-1.29)で強く関連しました。若年で不妊と報告した女性でより強い関連を示しました(25歳以下、HR、1.19;95%CI、1.07-1.33;26-30歳、HR、1.11;95%CI、0.99-1.25;30歳以上、HR、1.07;95%CI、0.94-1.22;p<0.001)。

私見

肥満に関連した生殖器癌と不妊の関連を示した報告は意外と古いものしかありません。今回の研究は、不妊に伴う高インスリン血症、高アンドロゲン血症、慢性炎症などが肥満関連癌のリスク上昇をもたらすのではないかと考えていたようですが、生殖器がん以外ではリスク上昇が乏しく仮説どおりではなかったと報告しています。
今回の研究では肥満でなくても若年で不妊と判断された場合は肥満に関連した生殖器癌が上昇していました。不妊治療が終わった後に、定期的に婦人科フォローアップは必要なのでしょうね。

引用文献

閉経後乳がん
D. Meirow, J.G. Hum Reprod Update, 2 (1996), pp. 63-75 
Y.T. Jiang, et al. Int J Cancer, 147 (2020), pp. 2121-2130 

子宮内膜がん 
B. Modan, et al. Am J Epidemiol, 147 (1998), pp. 1038-1042 

卵巣がん 
C.B. Coulam, et al. Obstet Gynecol, 61 (1983), pp. 403-407 
T.A. Sellers, et al. Cancer Causes Control, 4 (1993), pp. 21-28

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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