はじめに
着床前遺伝学的検査(PGT)を行った後の妊娠は、trophectoderm生検などを行っているため、周産期リスクが上がるのではないかと懸念があり、さまざまな報告がなされています。症例数が多い多施設レトロスペクティブコホート研究が報告されましたのでご紹介いたします。
ポイント
PGT(着床前遺伝学的検査)は、単胎妊娠の母体および新生児の有害事象増加との関連はなさそうです。
引用文献
Mauro Cozzolino, et al. Hum Reprod. 2023 Jun 19;dead123. doi: 10.1093/humrep/dead123.
論文内容
2016年10月から2021年1月に体外受精/顕微授精を行った単胎妊娠・出産を対象とした多施設生殖医療施設のレトロスペクティブ・コホート研究です。
PGT-Aあり(3,296症例)またはPGT-Aなし(3,850症例)の単一胚移植後の7,146件の生児出生を対象としました。主要評価項目は妊娠高血圧症候群、副次評価項目は妊娠糖尿病、低出生体重児および超低出生体重児、帝王切開分娩、緊急帝王切開、早産、出生体重、先天異常、新生児性別、5分後のアプガースコア、新生児集中治療室入院としました。サブグループ解析では、次世代シークエンサー(NGS)でスクリーニングした胚盤胞のみを対象としました。
結果
単変量解析では、妊娠高血圧症候群、帝王切開率、低アプガースコアは、PGT-Aを受けた女性で高いことがわかりました。多くの交絡因子を考慮した多変量ロジスティック回帰モデルおよび線形回帰モデルを実施した結果、胚生検後に妊娠した場合、母体および新生児の有害事象は増加しませんでした。NGSでスクリーニングされた胚盤胞胚移植後のサブグループ解析では、PGT-Aを受けたグループで早産リスクが低下していました。多変量解析は、母体年齢、BMI、分娩数、総ゴナドトロピン量、PGT-A法(aCGHまたはNGS)、排卵周期 vs. ホルモン調整周期、新鮮胚 vs. 凍結融解胚移植、IVF vs. ICSI、精子(自己 vs. ドナー、新鮮 vs. 凍結)、新生児性別などで調整しています。
私見
PGT-Aでの胚移植はホルモン調整周期胚移植、卵子ドナーでの症例などが含まれ、妊娠高血圧症候群リスクが高い症例が多いため、このような多い症例数での報告は後ろ向き研究での有用なエビデンスだと考えています。
着床前検査は、周産期予後や幼児期の健康に悪影響があるの?(Hum Reprod. 2023 )
Erica Ginström Ernstad, et al. Hum Reprod. 2023 Feb 7;dead021.
文責:川井清考(WFC group CEO)
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