プレコンセプションケア

2025.02.15

食事が男性生殖機能と関連!?

研究の紹介

男性の生殖機能における食事パターン、食品、栄養素:観察研究の系統的レビュー

Dietary patterns, foods and nutrients in male fertility parameters and fecundability: a systematic review of observational studies.

Salas-Huetos A, 他. Hum Reprod Update. 2017 Jul 1;23(4):371-389. doi: 10.1093/humupd/dmx006. PMID: 28333357.

男性の生殖機能が全身の健康と深く関係していることは、以前から指摘されてきました。近年では、不適切な生活習慣や併存疾患、不健康な状態が男性の生殖機能に影響を及ぼすだけでなく、母子の健康にも関与することが明らかになっています。
患者さんから食事に関する質問を受けることがよくありますが、これまで十分にお答えできず、「健康的でバランスの取れた食事を心がけてください」といった一般的なアドバイスにとどまっているのが現状です。
今回ご紹介する研究は、健康的な食事と生殖機能の関連について系統的にレビューを行った研究です。やはり、健康的な食生活に勝るものはないということのようです。

研究の要約

背景

不妊は世界的な公衆衛生上の課題であり、生殖年齢のカップルの15%に影響を及ぼしています。食事パターンや食事や栄養素の構成は、精子の機能や生殖能力を決定する因子として研究されてきました。

目的と根拠

これまでに、特定の栄養素や栄養補助食品が男性不妊に及ぼす影響を調査した少数で不均一な参加者を対象とした、質の低いランダム化比較試験(RCT)の系統的レビューが行われてきました。しかし、観察研究を対象とした系統的レビューはこれまで実施されていません。

検索方法

最も古いオンライン索引年から2016年11月までの発表論文を対象としました。本レビューは、システマティックレビューおよびメタアナリシスのための優先報告項目(PRISMA)ガイドラインに従って行われました。
対象とした研究は、横断研究、症例対照研究、前向きおよび後向き研究であり、生殖能力のある男性/不妊男性が明確に定義されているもの(精子障害、精子DNA損傷、精索静脈瘤、特発性不妊を有する男性を対象)を含めました。
主要アウトカムは、精液の質または生殖能力(fecundability)としました。抽出したデータをもとに、選択した研究の質を評価し、スコアリングを行いました。ランダム化比較試験(RCT)、動物実験、レビュー論文、質の低い研究は除外されました。

結果

合計1,944本の論文を特定し、そのうち35本を質的分析の対象として選定しました。
以下のような健康的な食事は、精液の質(精液検査所見)の低下と逆相関を示しました。
摂取するとよい栄養素を示します。
  – オメガ3脂肪酸
  – 抗酸化物質(ビタミンE、ビタミンC、β-カロテン、セレン、亜鉛、クリプトキサンチン*、リコピン)
  – その他のビタミン(ビタミンD、葉酸)
– 低い脂肪摂取:
 – 飽和脂肪酸およびトランス脂肪酸の摂取が少ない

また、以下の食品は精子の質の向上と関連がありました。
– 魚介類(魚、貝類、シーフード)
– 鶏肉
– 穀類
– 野菜・果物
– 低脂肪乳製品・脱脂乳

一方で、以下の食品を多く含む食事は、いくつかの研究において精液の質に悪影響を与えると報告されました。
– 加工肉
– 大豆食品
– じゃがいも
– 全脂乳・乳製品(チーズを含む)
– コーヒー
– アルコール
– 糖分を含む飲料・甘味食品

生殖能力(fecundability:受精率、妊娠率、流産率)については、アルコール、カフェイン、赤身肉・加工肉の高摂取が、パートナーの妊娠率や受精率の低下と関連していることが示されました。

今後の展開

健康的な食事を実践することは、男性の精液の質や生殖能力の向上につながる可能性があります。しかし、観察研究は因果関係ではなく関連性を示すに過ぎないため、本レビューで示された関連を確認するには、大規模な前向きコホート研究や、特に質の高いランダム化比較試験(RCT)による検証が必要です。

*クリプトキサンチン カロテノイドの一種で、抗酸化作用を持ちます。

筆者の意見

男性の生殖機能を高める食事について、本研究は参考になる内容だと思います。すべての食習慣を一度に改善するのは難しいですが、良いとされる食品を意識的に取り入れることが大切です。私は妊活中ではありませんが、健康的な食生活の参考になる有益な結果だと感じました。
一般的に大豆食品は健康に良いとされていますが、大豆に含まれているイソフラボンは植物性エストロゲン(フィト・エストロゲン)と呼ばれ、女性ホルモンであるエストロゲンに似た働きをすることから、精液の質に対して逆効果となる可能性が指摘されています(特に欧米人で)。適度に摂取し、バランスの取れた食事を心がけることが重要です。

亀田IVFクリニック幕張では、妊活中の男性を対象とした食事内容に関する研究も行っています。食事内容がよいかどうか無料でチェックできます。自身の食生活を見直したいとお考えの方は、当クリニックの泌尿器科・小宮までお問い合わせください。

文責:小宮顕(亀田総合病院 泌尿器科部長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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亀田総合病院 泌尿器科部長

小宮 顕

亀田総合病院 泌尿器科部長(男性不妊担当) 生殖医療専門医・生殖医療指導医。男性不妊診療を専門的に従事する。本コラムでは男性妊活の参考になる話題を紹介している。

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