
はじめに
外陰腟カンジダ症(外陰部および腟のカンジダ感染症)は、外陰部のかゆみや帯下異常の主要原因であり、女性の約75%が生涯に1回以上罹患するとされています。さらに5~10%は12か月以内に4回以上の発症をきたす再発性外陰腟カンジダ症に移行し、世界で約3億5,000万人が生涯のうちに罹患すると推計されています。第一選択薬はフルコナゾールに代表されるアゾール系抗真菌薬ですが、再発性カンジダ症患者の50%超でフルコナゾール耐性が報告されており、新たな治療戦略として腟内細菌叢を整えるプロバイオティクス(生きた有用菌)の併用や代替療法に注目が集まっています。今回、非妊婦の外陰腟カンジダ症および再発性外陰腟カンジダ症に対するプロバイオティクスの臨床効果を系統的に評価したシステマティックレビュー・メタアナリシスをご紹介いたします。
ポイント
抗真菌薬とプロバイオティクス併用は短期(1か月未満)の治癒率改善と6か月再発率低下に有用ですが、長期効果は限定的でエビデンスの質は低いとされました。
引用文献
Rongdan Chen, et al. Am J Obstet Gynecol. 2026 Jun;234(6):1604-1622. doi: 10.1016/j.ajog.2026.01.009.
論文内容
非妊婦の外陰腟カンジダ症および再発性外陰腟カンジダ症に対するプロバイオティクスの治療価値を体系的に評価することを目的としたシステマティックレビュー・メタアナリシスです。Cochrane Library、PubMed、Embase、ClinicalTrials.gov、Web of Scienceを2025年10月12日まで検索し、外陰腟カンジダ症または再発性外陰腟カンジダ症と診断された非妊婦を対象としたランダム化比較試験を組み入れ対象としました。比較は3群、①プロバイオティクス+抗真菌薬 vs 抗真菌薬(プラセボの有無を問わず)、②プロバイオティクス単独 vs 抗真菌薬、③プロバイオティクス単独 vs プラセボとし、主要アウトカムは治癒率および再発率としました。RR(リスク比)および95%CI(信頼区間)はMantel-Haenszel法で算出し、異質性に応じて変量効果モデルまたは固定効果モデルを適用しました。最終的に14件のランダム化比較試験(介入群671例、対照群636例、2003~2025年に発表)が組み入れ基準を満たしました。
結果
比較①では、低~非常に低い質のエビデンスに基づき、併用療法は短期(1か月未満)の真菌学的治癒(培養陰性化、RR=1.19;95%CI、1.03–1.36;P=.02)および臨床的治癒(症状消失、RR=1.41;95%CI、1.14–1.74;P=.001)を有意に改善し、6か月再発率を低下させました(RR=0.20;95%CI、0.05–0.83;P=.03)が、1か月以上の長期効果は認められませんでした(P>.05)。再発性カンジダ症については、併用療法は3か月時点の真菌学的治癒+臨床的治癒の複合治癒率を改善しましたが(RR=8.00;95%CI、2.06–31.07;P=.003)、6~12か月の持続効果は確認されませんでした(P>.05)。
比較②では、プロバイオティクス単独と抗真菌薬の間で短期成績に差はありませんでした(P>.05)が、長期の真菌学的治癒では抗真菌薬の方が優れていました(RR=0.52;95%CI、0.32–0.85;P=.009、非常に低い質のエビデンス)。
比較③では、再発性カンジダ症に対してプロバイオティクス単独は6か月時点の真菌学的治癒率をプラセボより有意に高めました(RR=12.64;95%CI、1.77–90.01;P=.01、低い質のエビデンス)。有害事象は主に悪心や消化器症状であり、プロバイオティクス関連介入群と抗真菌薬単独群との間で有意差はみられませんでした(P>.05)。サブグループ解析(投与経路、用量、菌株種類)は組み入れ研究数が不足したため実施できませんでした。GRADE評価によるエビデンスの確実性は非常に低い~低いと判定されました。
全体の傾向
- 菌株:14試験中12試験でラクトバチルス属が含有され、特にラクトバチルス・ラムノーサス(GR-1、HN001など)、アシドフィルス、ガセリ、クリスパタスが頻用されました。一部にビフィドバクテリウム属(ビフィダム、ロンガム)やストレプトコッカス・サーモフィラスが併用されています。
- 用量:単一菌株では1億〜100億CFU、複合菌株では各菌種10億CFU前後と試験間でばらつきがあります。
- 経路:経口投与7件、腟投与5件、両者併用2件と経路は分散しています。
私見
本メタアナリシスは、抗真菌薬とプロバイオティクスの併用が短期治癒率改善および6か月再発率低下に寄与する一方、長期予後の改善には至らないことを示しました。先行する複数のシステマティックレビューも本研究と概ね一致した結論を示しています。
肯定派(短期効果を支持):
- Xie HY, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2017. (10試験・1,656例:併用療法は短期の臨床的・真菌学的治癒率を改善し1か月以内の再発率を低下させるが、長期治癒率の改善には至らず)
- Jeng HS, et al. Exp Ther Med. 2020. (10試験・1,109例:併用療法がカンジダ症の治癒率を高め再発率を低下させるとしたがサブグループ解析やプラセボ比較は未実施)
- Abavisani M, et al. Taiwan J Obstet Gynecol. 2024. (ランダム化比較試験13件:併用療法が治癒率を改善し再発率を低下させたが、用量や追跡期間の影響は未検討)
ラクトバチルスは腟内常在菌叢の約70%を占め、酸性環境の維持やカンジダ・アルビカンスの菌糸形成阻害を介して感染防御に寄与すると考えられており、抗真菌薬が一時的にカンジダを抑制した後にプロバイオティクスがラクトバチルス優位の微生物叢を再構築する二段階機序が想定されています。臨床的には、急性外陰腟カンジダ症には併用療法が短期成績の最適化と6か月再発予防に有用であり、再発リスクの高い症例では特に考慮されます。再発性カンジダ症においては抗真菌薬治療後の補助療法としてプロバイオティクスを継続する戦略が3か月時点の複合治癒率や6か月時点の真菌学的治癒率改善に有望ですが、6~12か月の長期予後改善は確認されておらず、菌株・投与経路・投与時期の最適化を含めた標準化された大規模試験が望まれます。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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