体外受精

2023.06.14

胚移植前プロゲステロン濃度は腟剤使用範疇であれば高くても大丈夫(Fertil Steril. 2023)

はじめに

ホルモン調整周期下凍結融解胚移植の血中プロゲステロン濃度低値が治療成績に悪影響を与えることが数多く報告されています。

  • Labarta E, et al. Hum Reprod 2017;32:2437–42.
  • Cedrin-Durnerin I, et al. Reprod Biomed Online 2019; 38: 472–80.
  • Gaggiotti-Marre S, et al. Gynecol Endocrinol 2019; 35: 439–42.
  • Melo P, et al. Fertil Steril 2021; 116: 1534–56.
  • Gonzalez-Foruria I, et al. Reprod Biomed Online 2020; 40: 797–804.
  • Maignien C, et al. Reprod Biomed Online 2022; 44: 469–77.
  • Basnayake SK, et al. Aust N Z J Obstet Gynaecol 2018;58: 533–8.

それに比べて、血中プロゲステロン濃度高値が治療成績に悪影響を与えるという報告は散見されますが、注射製剤メインであったり、症例数が少なかったり、一定の見解は得られていません。

  • J.D. Kofinas, et al. J Assist Reprod Genet 2015;32: 1395-1399
  • J.L. Yovich, et al. Reprod Biomed Online 2015;31: 180-191
  • B. Alsbjerg, et al. Reprod Biomed Online 2020;40: 805-811
  • A. Alyasin, et al. Reprod Biol Endocrinol 2021;19: 24

今回ご紹介する報告はプロゲステロン腟剤メインでの黄体補充で、血中プロゲステロン値が低い場合にだけプロゲステロン注射を追加するような過剰にプロゲステロンを投与しない場合では生殖医療成績に影響を与えるかどうかを調査した報告をご紹介いたします。

ポイント

胚移植前プロゲステロン濃度はプロゲステロン腟剤メイン使用での範疇であれば高くても生殖医療成績にマイナスの影響はなさそうです。BMIは血中プロゲステロン濃度の予測因子になりそうです。

引用文献

Iñaki González-Foruria, et al. Fertil Steril. 2023 May 2;S0015-0282(23)00330-8. doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.04.038.

論文内容

2009年3月から2020年12月にホルモン調整周期下凍結融解胚移植を実施した3,183周期を対象(homologous embryo transfer(hom-ET) 1360周期、euploid ET (eu-FET)1024周期、heterologous ET (het-FET)799周期)とするレトロスペクティブコホート研究です。黄体補充はプロゲステロン腟剤200mg 8時間ごと、胚移植前日にホルモン採血を実施し、血中プロゲステロン値 10.6 ng/mL以下の場合はプロゲステロン25mg皮下注射を追加し、胚移植日に再度ホルモン採血を実施しました。評価項目は臨床的妊娠率、流産率、出生率としました。

結果

ホルモン調整周期下凍結融解胚移植の血中プロゲステロン(P4)値の中央値(P25;P75)は14.39(12.43-17.49)ng/mLでした。血中P4値は腟剤+皮下注射併用群で高くなりました(15.96 [13.74-21.60] vs. 14.09 [12.19-16.95] )。臨床妊娠、流産、出生率について、各群(hom-FET、eu-FET、het-FET)の腟剤単独群、腟剤+皮下注射併用群ともに差を認めませんでした。出生率は、血中P4値が高い群(>p90)(22.33ng/mL)とそれ以外(p<90)で同等の成績でした(43.9% vs. 41.3%)。血中P4値が高い群(>p90)は、それ以外(p<90)の群に比べて低BMIを認めました(22.62±3.82 vs. 23.32±4.06)。血中P4値と出生率の関連は認めませんでした。採卵時年齢、治療法、BMI、黄体補充、移植胚数で調整した多変量ロジスティック回帰でも血中P4値の最高値90 centile、95 centileで比較検討しても血中P4値が高すぎても出生率に悪影響を与えないことがわかりました。

私見

血中プロゲステロン値は子宮内膜胚受容能には濃度の高低で影響は与えないとされていますが、その後のtrophectodermの浸潤増殖には影響を与えているのかもしれません。
血中プロゲステロンはERA検査の受容能と関連するか?
関連コラムをピックアップいたします。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# プロゲステロン/プロゲスチン

# 黄体補充

# ホルモン調整周期下胚移植

# 凍結融解胚移植

# 総説、RCT、メタアナリシス

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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