体外受精

2022.07.28

ホルモン調整周期凍結融解胚移植の黄体補充は腟剤+内服がよい(Hum Reprod. 2021)

はじめに

ホルモン調整周期凍結融解胚移植の胚移植日の血清プロゲステロン値が低すぎると胚移植成績が低下することが報告されています。ただし、どのような症例でプロゲステロン値が低下するかわかっておらず、事前予測が立てられません。そこで、プロゲステロン腟剤に経口ジドロゲステロン(デュファストン®)を加えた黄体補充を行うことにより、プロゲステロン腟剤の低プロゲステロン状態をフォローして胚移植成績が向上しないか調査した報告をご紹介いたします。 

ポイント

プロゲステロン腟剤に経口ジドロゲステロン(デュファストン®)を加えたホルモン調整周期凍結融解胚移植は、プロゲステロン腟剤単独に比べて出生率が高く、流産率が低いことが分かりました

引用文献

Lan N Vuong, et al. Hum Reprod. 2021. Jun 18;36(7):1821-1831. doi: 10.1093/humrep/deab093. 

論文内容

2019年6月26日から2020年3月30日までベトナムの生殖医療施設で実施された前向きコホート研究です。ホルモン調整周期凍結融解胚移植を受けた女性1,364名を対象としました。黄体補充は、子宮内膜の厚さが8mm以上になった時点で開始しました。プロゲステロン腟剤400mg1日2回を試験前半に実施、プロゲステロン腟剤400mg1日2回+経口ジドロゲステロン10mg1日2回を試験後半に実施しました。黄体補充は妊娠7週まで継続しました。主要評価項目は初回ホルモン調整周期凍結融解胚移植の出生率であり、副次評価項目は妊娠12週未満の初期流産としました。 

結果

プロゲステロン腟剤+経口ジドロゲステロン群732名、プロゲステロン腟剤群632名が参加しました。出生率はそれぞれ46.3% vs.41.3%(RR 1.12, 95% CI 0.99-1.27, P = 0.06; multivariate analysis RR 1.30 (95% CI 1.01-1.68), P = 0.03)でした。妊娠12週未満の初期流産率はプロゲステロン腟剤+経口ジドロゲステロン群がプロゲステロン腟剤群に比べて低くなりました(3.4% vs. 6.6%、RR 0.51, 95% CI 0.32-0.83; P = 0.009)。 

私見

ホルモン調整周期凍結融解胚移植は排卵を抑制しているため、黄体が存在せず、プロゲステロン値は腟剤・注射・経口投与でのみ補填されます。プロゲステロン注射は国内での製造が2022年末で終了となっていますので、腟剤と経口薬での管理が国内ではメインとなります。 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# ホルモン調整周期下胚移植

# 凍結融解胚移植

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

修正自然周期凍結融解胚移植の出生率への影響(Fertil Steril. 2025)

2026.01.19

5回反復凍結融解胚移植の累積出生率解析(Hum Reprod Open. 2024)

2025.11.19

凍結融解胚移植と新鮮胚移植で生まれた兄弟の比較(F S Rep 2025)

2025.11.03

黄体補充優先排卵凍結融解胚移植における出生率(Human Reproduction Open. 2025)

2025.10.21

肥満PCOS女性における単一正倍数性胚盤胞移植の妊娠転帰(Fertil Steril. 2025)

2025.10.01

体外受精の人気記事

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

高年齢の不妊治療で注目されるPGT-A(2025年日本の細則改訂について)

自然周期採卵における採卵時適正卵胞サイズ(Frontiers in Endocrinology. 2022)

コエンザイムQ10における生殖機能への影響

日本の生殖補助医療における多胚移植率と多胎率の推移(J Obstet Gynaecol Res. 2025)

胚移植後hCG上昇値が緩慢でも生児獲得に至った症例報告(症例報告:F S Rep)

今月の人気記事

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

高年齢の不妊治療で注目されるPGT-A(2025年日本の細則改訂について)

2025.11.10

腟潤滑ゼリーは妊娠率に影響する?

2022.01.24

2025.12.31

2025年を振り返って:妊活コラム創設初年

2025.12.31