一般不妊

  • Home
  • 一般不妊
  • 人工授精
  • レトロゾール周期人工授精における排卵誘発時至適卵胞サイズ(Fertil Steril. 2025)

2025.09.03

レトロゾール周期人工授精における排卵誘発時至適卵胞サイズ(Fertil Steril. 2025)

はじめに

人工授精(IUI)を実施する際、排卵障害がある患者さま、もしくは原因不明不妊患者さまにクロミフェン(CC)やレトロゾールなどの排卵誘発剤と併用します。レトロゾールは、エストロゲン合成の最終段階を阻害するアロマターゼ阻害薬で、20年以上にわたり排卵誘発に使用されてきました。クロミフェン周期人工授精では18-28mmの範囲で最適な主席卵胞サイズが報告されていますが、レトロゾール周期人工授精における最適な卵胞サイズについては研究が限られています。 
今回、単一卵胞発育に焦点を当てたレトロゾール周期人工授精の大規模後ろ向き研究をご紹介いたします。

ポイント

レトロゾール周期人工授精におけるhCGトリガーの最適な主席卵胞サイズは19-23mmで、臨床的妊娠率を改善します。

引用文献

Krista Cameron, et al. Fertil Steril. 2025 Aug;124(2):327-333.  doi: 10.1016/j.fertnstert.2025.03.010.

論文内容

レトロゾール周期人工授精において、妊娠転帰に焦点を当てたhCGトリガーの最適な主席卵胞サイズを決定することを目的とした後ろ向きコホート研究です。2018年1月1日から2023年9月30日までに単一生殖医療施設で実施された724レトロゾール周期人工授精を対象としました。患者は周期3-7日目にレトロゾールによる排卵誘発を受け、経腟超音波で卵胞発育をモニタリングし、主席卵胞が希望サイズに達した時点でhCGを投与し、その後IUIを実施しました。 

主要評価項目は臨床的妊娠率で、主席卵胞サイズは(≤18mm、19-23mm、≥24mm)に分類し、ROC曲線とYouden指数による閾値を用いて二分化しました。

結果

724周期中92周期で臨床的妊娠が成立しました。臨床的妊娠率は≤17mmの卵胞で8.45%、18mmで8.89%、19mmの12.92%から22mmの18.52%まで増加した後、≥24mmの卵胞では11.43%に低下しました。生化学的妊娠率も同様の傾向を示しました。ロジスティック回帰分析では、19-23mmの卵胞において≤18mmと比較して臨床的妊娠の有意に高いオッズ比(aOR 1.71;95%CI 1.01-3.03)が示されました。≥24mmの卵胞ではaOR 1.80(95%CI 0.98-3.31)で、統計学的有意性には達しませんでしたが効果の可能性が示唆されました。ROC曲線分析に基づく卵胞サイズの最適閾値は19mmでした。二分化分析では≥19mmの卵胞で臨床妊娠の高いオッズ比(aOR 1.74;95%CI 1.01-3.01)が確認されました。

私見

本研究は単一卵胞発育に限定することで、複数卵胞による交絡効果を排除し、主席卵胞サイズの影響をより明確に示した点が優れています。方向性としては小さすぎず、大きくなり過熟気味でも一定の妊娠率が担保されるというのがコンセンサスのようです。 
先行研究では、下記のようになっています。 

  • Palatnik et al. (クロミフェン療法もしくはレトロゾール療法で23-28mmが最適):
    Fertil Steril. 2012;97(5):1089-94.e1-3. 
  • Chen et al. (レトロゾール療法で16.1-18.0mmが最適、LHサージが出た場合はより小さくても大丈夫)
    Reprod Biomed Online. 2023;46(3):566-76. 
  • Hancock KL, et al. (クロミフェン療法で22.1mmが最適) 
    Fertil Steril. 2021;115(4):984-90. 
  • Farhi et al. (PCOS女性291名クロミフェン療法で18-22mmが最適):
    Gynecol Endocrinol. 2010;26(8):546-8.

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# クロミフェン、AIなど

# 人工授精

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

2025.06.03

原因不明不妊に対するCC、AI、ゴナドトロピン注射と人工授精の費用分析(Fertil Steril. 2024)

2025.06.03

2025.04.21

人工授精における精子調整法の比較(Hum Reprod. 2025)

2025.04.21

2024.02.06

人工授精hCGトリガーまでの日数は成績に影響しない(F S Rep. 2023)

2024.02.06

2024.02.01

一般不妊治療早期ドロップアウトの要因(Hum Reprod. 2024)

2024.02.01

2024.01.31

サブの12mm以上の発育卵胞は人工授精多胎妊娠リスク(Hum Reprod. 2023)

2024.01.31

一般不妊の人気記事

腟潤滑ゼリーは妊娠率に影響する?

2022.01.24

妊活中の子宮内膜症進行リスク(Hum Reprod. 2025)

2025.08.13

PCOS診断基準(2024)の内分泌異常基準値(J Obstet Gynaecol Res. 2023)

2023.09.12

妊娠できるカップルはほぼ6ヶ月以内に妊娠する。(論文紹介)

2021.11.11

子宮卵管造影後どういうカップルが妊娠しやすい?(論文紹介)

2020.06.10

着床する時期のタイミングは妊娠率に影響するの?(Fertil Steril. 2014)

2020.08.05

今月の人気記事

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

2024.03.14

禁欲期間が長いと妊活にはよくないです

2024.03.14

我が国の統計からの興味深い情報のご紹介~男性は何歳まで子供を作ることができるのか~

2023.06.03

2020.10.26

夫婦の体重(BMI)は妊娠しやすさ(不妊)に影響する?(Fertil Steril. 2020)

2020.10.26

ART不成功におけるタクロリムス治療(J Reprod Immunol. 2026)

2026.02.27