治療予後・その他

2024.07.30

前置胎盤の有無による癒着胎盤の特徴の違い(Am J Obstet Gynecol MFM. 2023)

はじめに

癒着胎盤は、胎盤絨毛が子宮筋層内に侵入し胎盤の一部又は全部が子宮壁に強く癒着して胎盤の剥離が困難なものを癒着胎盤といいます。 

単純癒着胎盤(placenta accreta)
絨毛が子宮筋層表面にのみ癒着し、筋層内に進入していないもの 

侵入胎盤(placenta increta)
絨毛が子宮筋層深く侵入しているが、漿膜面に達していないもの 

穿通胎盤(placenta percreta)
絨毛が子宮筋層を貫通し、漿膜面まで及んでいる状態のもの 

前置胎盤の有無による癒着胎盤の特徴の違いをまとめたメタアナリシスをご紹介いたします。 

ポイント

前置胎盤の有無による癒着胎盤スペクトラムの臨床的側面の違いを理解 
前置胎盤なしの癒着胎盤の特徴(前置胎盤と比較して) 

・侵襲性胎盤リスクが低い。  ・異常分娩時出血量が少ない。 

・子宮摘出割合が少ない。   ・分娩前診断がつきにくい。 

・母体年齢は関係なさそう。  ・生殖補助医療との関連が強い。 

・帝王切開既往との関連が低い ・子宮内操作との関連が強い。 

引用文件

Shunya Sugai, et al. Am J Obstet Gynecol MFM. 2023 Aug;5(8):101027. doi: 10.1016/j.ajogmf.2023.101027. 

論文内容

前置胎盤を伴わない病理学的に証明された癒着胎盤スペクトラムに関する臨床的特徴を評価することを目的としたシステマティックレビュー・メタアナリシスです。PubMed、Cochraneデータベース、およびWeb of Scienceの文献検索を2022年9月7日までの期間で実施しました。主要評価項目は、侵襲性胎盤(incretaまたはpercretaを含む)、分娩時異常出血、子宮摘出、分娩前の診断としました。副次評価項目として、母親年齢、生殖補助医療、帝王切開分娩既往、子宮内処置既往としました。 

結果

検索した2,598件の研究のうち5件を選択し、メタアナリシスは4件の研究で実施しました。メタアナリシスにより、前置胎盤を伴わない癒着胎盤スペクトラムは、侵襲性胎盤リスクが低く(OR 0.24;95%CI 0.16-0.37)、分娩時異常出血が少なく(平均差 -1.19L;95%CI -2.09~-0.28L)、子宮摘出割合が少なく(OR 0.11;95%CI 0.02~0.53)、分娩前診断が困難(OR 0.13;95%CI 0.04~0.45)でした。加えて、生殖補助医療と子宮内処置既往は、前置胎盤を伴わない癒着胎盤スペクトラムの強いリスク因子でしたが、帝王切開分娩既往は、前置胎盤を伴う癒着胎盤スペクトラムの強いリスク因子でした。 

私見

前置胎盤を伴わない癒着胎盤スペクトラムplacenta accreta spectrum(PAS)はより軽度であり、前置胎盤を伴う伴わない癒着胎盤スペクトラムの違いを意識することが大事だと思います。生殖補助医療治療に関わるので、妊娠紹介先にわかりやすいリスク抽出をしてバトンを渡していくことが必要ですね。 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 胎盤異常

# 癒着胎盤

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

母乳を通じたSSRI曝露と小児の認知機能(JAMA Network Open. 2025)

2026.01.07

帝王切開既往と出産回数が子宮破裂リスクに与える影響(Am J Obstet Gynecol. 2025)

2026.01.06

妊娠期ビタミンD補充による子どもの骨密度長期改善効果:MAVIDOS研究の追跡調査(Am J Clin Nutr. 2024)

2026.01.05

妊娠中ビタミンD補充が新生児骨健康に及ぼす影響:MAVIDOS研究(Lancet Diabetes Endocrinol. 2016)

2025.12.29

治療予後・その他の人気記事

帝王切開既往と出産回数が子宮破裂リスクに与える影響(Am J Obstet Gynecol. 2025)

自然妊娠と体外受精妊娠、どっちが流産多いの?

妊娠高血圧腎症予防のアスピリン投与について(AJOG2023 Clinical Opinion)

妊娠中メトホルミン使用は児神経予後と関連しない(Am J Obstet Gynecol. 2024)

2022.03.01

子宮動脈塞栓術(UAE)後の妊娠は危険?(Am J Obstet Gynecol. 2021)

今月の人気記事

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

高年齢の不妊治療で注目されるPGT-A(2025年日本の細則改訂について)

2025.11.10

我が国の統計からの興味深い情報のご紹介~男性は何歳まで子供を作ることができるのか~

2023.06.03

PCOS女性の妊娠前・初期メトホルミンが妊娠転帰に与える影響(Am J Obstet Gynecol. 2025)

2025.12.22