はじめに
PGT-Aは染色体異常を検出し、胚の選別に役立つ技術ですが、胚生検によるダメージや判定不能リスクもあり、必ずしも妊娠・出産率を改善するとは限りません。今回、米国ARTレジストリを用いて年齢別の有用性を検証した研究をご紹介します。
ポイント
PGT-Aは35歳未満では累積生児出生率がやや低下し、38~40歳では逆に出生率が高くなることが示されました。
引用文献
Benjamin S Harris, et al. Fertil Steril. 2025 Mar;123(3):428-438. doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.09.043.
論文内容
対象:2016~2019年、SART登録施設で初回自己卵子使用、5個以上の胚盤胞を得た21~40歳の患者(56,469周期)
方法:PGT-Aを実施した群と非実施群に分けて、最大3回までの単一胚盤胞移植後の累積生児出生率を比較
評価指標:累積生児出生率(主要)、臨床妊娠率、流産率、移植あたりの出生率(副次)
結果
– 35歳未満:PGT-Aにより累積生児出生率わずかに低下(RR: 0.96)
– 35~37歳:PGT-A群で出生率やや上昇(RR: 1.04)
– 38~40歳:PGT-A群で明確に上昇(RR: 1.14)
– サブ解析(全胚凍結):35歳以上でPGT-A群の出生率が高く、35歳未満では差なし
私見
複数の研究で35歳未満ではPGT-Aの有用性は限定的または逆効果であると報告されており、本研究も同様の傾向でした。
– Kucherov et al.:40歳以上を除くとPGT-Aにより出生率が減少
– Mejia et al.:35歳未満で出生率低下、35~37歳では差なし
– STAR試験:35歳未満では出生率低下、35~40歳では改善
– Yan et al.:20~37歳の良好予後群でもPGT-A群の出生率が低かった
PGT-Aの適応は年齢・予後因子に応じた個別化が必要であり、特に35歳未満では慎重な適応判断が求められます。
文責:川井清考(院長)
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