一般不妊

2023.07.25

子宮内膜症女性への卵子凍結の特徴(Reprod Biomed Online. 2020)

はじめに

Linda C Giudiceらの子宮内膜症の権威ある雑誌の総説でも、「子宮内膜症は、妊娠可能な年齢の女性の6~10%が罹患していること、子宮内膜症女性の35~50%が疼痛、不妊、またはその両方を訴えていること」が示されています。 N Engl J Med. 2010 Jun 24;362(25):2389-98. doi: 10.1056/NEJMcp1000274. 

子宮内膜症に対して、手術術前に卵子凍結に関するカウンセリングをおこない、卵子凍結を実施した場合の臨床的特徴を示した報告をご紹介いたします。 

ポイント 

子宮内膜症で手術をおこなう女性に対して、卵巣予備能の低下や内膜症自身の妊孕性への影響について、手術前にカウンセリングを受けることが好ましそうです。出生率を上昇させるために必要な回収卵子数を確保するのに複数回採卵を重ねることが必要となることも含めて情報提供することが望ましいと考えます。 

引用文献

Se Jeong Kim, et al. Reprod Biomed Online. 2020 Jun;40(6):827-834. doi: 10.1016/j.rbmo.2020.01.028. 

論文内容

子宮内膜症手術前女性34名を対象に、臨床的成績を検討しました。リプロダクティブ卵子凍結を実施した子宮内膜症女性の1周期目の卵巣刺激成績を、子宮内膜症がない女性22名の成績と1対1の傾向スコアマッチ解析を用いて比較検討しました。 

結果

術前の子宮内膜症性嚢胞の平均サイズは6.0±2.5cm、平均年齢、血清AMH値、凍結卵子数は30.7±5.9歳、1.85±1.14ng/ml、4.8±3.2個でした。両側子宮内膜症性嚢胞女性と片側子宮内膜症性嚢胞女性の凍結保存卵子数は、4.1±2.9個 vs. 5.7±3.4個で差はありませんでした(P = 0.600)。傾向スコアマッチされた健常女性コントロール群に比べて、回収卵子数が有意に少なくなりました(5.4±3.8個 vs. 8.1±4.8個;P = 0.045)。13名(38.2%)の子宮内膜症女性が反復卵巣刺激・卵子凍結をおこないました。 

私見

がん・生殖の普及時もそうでしたが、医療介入前に手術実施施設でおこなっていない医療選択肢を提示することは、なかなか困難です。地域連携などを確立していくことが、医療資源の効率化のために必要なのかもしれません。 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 子宮内膜症

# 妊孕性温存

# 卵子凍結

# 卵巣予備能、AMH

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

PCOS患者におけるレトロゾール延長投与の妊娠転帰への影響(F S Rep. 2025)

2025.11.11

早発卵巣不全(POI)の診断と管理:新しいエビデンス(Human Reproduction Open. 2024)

2025.10.27

PCOS診断におけるAMH測定の有用性:HARMONIA研究(Fertil Steril. 2025)

2025.10.20

子宮内膜症患者における卵巣反応不良とART成績(J Assist Reprod Genet. 2025)

2025.10.17

PCOS女性における減量後の卵胞動態の変化(Hum Reprod. 2025)

2025.09.29

一般不妊の人気記事

2025.09.03

レトロゾール周期人工授精における排卵誘発時至適卵胞サイズ(Fertil Steril. 2025)

不妊分野での柴苓湯使用について

妊活中の子宮内膜症進行リスク(Hum Reprod. 2025)

PCOS患者におけるレトロゾール延長投与の妊娠転帰への影響(F S Rep. 2025)

2020.12.19

クロミッド®卵巣刺激による人工授精を決める卵胞の大きさは?(Fertil Steril 2020)

PCOS診断基準(2024)の内分泌異常基準値(J Obstet Gynaecol Res. 2023)

今月の人気記事

妊娠女性における葉酸サプリメント摂取状況と情報源(Public Health Nutr. 2017)

2025.12.09

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

精液所見に最適な運動量は? (Fertil Steril., 2025)

2025.12.06

妊娠中マルチビタミン摂取の周産期転帰(Cochrane Database Syst Rev. 2017)

2025.12.08

睡眠と生殖機能:男女妊孕能への影響(Journal of Circadian Rhythms. 2020)

2025.12.01