治療予後・その他

2023.08.02

がん治療後すぐの妊娠は、早産リスクを上昇させる(Cancer. 2018)

はじめに

「化学療法治療後に妊娠した場合、周産期リスクは上昇しますか?」と患者様に聞かれることがあります。 化学療法治療後6~12ヵ月は妊娠を延期するよう勧められることが一般的です。流産や先天性異常のリスクが高くなる可能性があることが理由に挙げられています。また、妊娠継続できたとしても早産・子宮内胎児発育遅延なども報告されています。今回、化学療法からの期間にわけて、早産リスクを調査した報告をご紹介いたします。 

ポイント

化学療法後に妊娠した女性は、治療からの妊娠期間が短かった場合、早産率上昇との関連がありました。 

引用文献

Kathleen P Hartnett, et al. Cancer. 2018 Nov 15;124(22):4401-4407. doi: 10.1002/cncr.31732. 

論文内容

米国3州のがん登録の診断および治療情報データベースから20~45歳の浸潤がん、乳管がん(in situ)と診断された後に妊娠した女性を対象としたレトロスペクティブコホート研究です。がん既往がない女性と出産におけるリスクと比較しました。 

結果

何らかのがんに対する化学療法開始後1年以内に妊娠した女性は、がん既往がない女性よりも早産リスクが高くなりました(化学療法単独:RR、1.9;95%CI、1.3-2.7;放射線療法併用化学療法:RR、2.4;95%CI、1.6-3.6)。放射線療法を併用しない化学療法開始後1年以上または放射線を併用する化学療法開始後2年以上経過した妊娠女性では上昇しませんでした。乳がん女性では、放射線療法併用の有無に関わらず化学療法終了後1年以上経過した後に妊娠した女性は、がん既往がない女性と比べて早産リスク上昇は認めませんでした。 

子宮頸がんでは、早産リスクは高い状況が続きましたが、1年以降経過した場合に若干低下しました(診断後1年未満で妊娠した場合:RR、3.5;95%CI、2.2-5.4;診断後1年を超えて妊娠した場合:RR、2.4;95%CI、1.6-3.5)。 

私見

化学療法が早産を一過性に増加させる機序として免疫状態のアンバランスが指摘されています。 乳がん患者の免疫抑制は、化学療法後数ヵ月または数年持続し、CD4+細胞数は化学療法12~14ヵ月後には化学療法前の1/2になっていると報告されています(Hakim FT, et al. Blood. 1997; 90: 3789-3798. Verma R, et al. Breast Cancer Res. 2016; 18: 10.)。 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

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WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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