体外受精

2023.08.18

母親年齢が上がると正倍数性胚を戻しても成績が変わる?(Fertil Steril. 2023)

はじめに

母体年齢が上昇すると、胚の染色体異常の影響で、妊娠率が低下・流産率が増加すると考えられています。では、着床前検査を行い、正倍数性胚を移植すると母親年齢に依存せず成績が変わらないのでしょうか。 

ポイント

母体年齢上昇とともに、正倍数性胚を移植しても生殖医療成績の低下と関連しています。 

引用文献

Amerigo Vitagliano, et al. Fertil Steril. 2023 Aug;120(2):251-265. doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.02.036. 

論文内容

母親年齢により正倍数性胚移植の生殖医療成績が影響を受けるかどうかを調査したreviewです。ScienceDirect、PubMed、Scopus、Embase、Cochrane library、Clinicaltrials.gov、EU Clinical Trials Register、WHO International Clinical Trials Registryなどのデータベースを2021年11月まで検索しました。35歳未満の女性と35歳以上の女性を比較し、正倍数性胚移植の継続妊娠率または出生率を主要評価項目としました。副次評価項目は着床率と流産率としました。 

結果

7件の研究が検証しました(11,335正倍数性胚移植)。35歳未満の女性では35歳以上の女性よりも継続妊娠率/出生率(OR 1.29;95%CI 1.07-1.54;I2= 40%、RD 0.06; 95%CI 0.02-0.09)、着床率(OR 1.22;95%CI 1.12-1.32;I2 = 0%、RD 0.04; 95% CI 0.02–0.06)が高くなりました。また、35歳未満の女性と35-37歳、38-40歳、41-42歳の女性を比較すると、継続妊娠率/出生率が高くなりました。 
SARTデータベースでは、35歳未満、35~37歳、38~40歳、41~42歳、42歳以上の女性の正常胚移植後の出生率は54.8% (95% CI, 54.5%–55.1%)、53.6% (95% CI, 53.2%–54.0%)、51.8% (95% CI, 51.4%–52.2%)、49.7% (95% CI, 49.0%–50.4%)、46.2% (95% CI, 45.1%–47.3%)でした。 

私見

ディスカッションで、母親年齢により正倍数性胚移植の生殖医療成績が影響を受ける仮説を3つあげています。1つめは子宮内膜の老化、2つめは子宮筋腫や子宮腺筋症、耐糖能異常などの婦人科疾患の増悪です。こちらは卵子提供でも母親年齢があがると妊娠率が低下することからも胚性因子以外の子宮内膜側の異常があることは間違いありません(R.S. Williams, et al. Fertil Steril. 2022)。 
3つめは異数性以外の胚性因子の存在です。胚の遺伝子発現、代謝、エピジェネティックな変化が影響を及ぼしている可能性があるとしています。 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 胚移植(ET)

# 着床前遺伝学的検査(PGT)

# 年齢素因

# 総説、RCT、メタアナリシス

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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