体外受精

2023.09.07

卵巣刺激低反応患者が貯胚することは非効率(Reprod Med Biol. 2023)

はじめに

卵巣刺激低反応女性は、累積回収卵子数が増えれば出生率が高くなることがわかってきますが、一回に移植できる胚が複数用意できないことから、採卵・胚移植を重ねる間に年齢も重ねてしまい、より卵子がとれなくなったり質が低下したりする可能性があります。卵巣刺激低反応患者が貯胚することが、累積出生率や生児出生までの期間に及ぼす影響を評価した報告をご紹介します。 

ポイント

ボローニャ基準に基づく卵巣刺激低反応女性は貯胚することは、貯胚しない場合と比較して、累積出生率の低下や生児出生までの期間の延長につながりました。 

引用文献

Qiu Lin Ge, et al. Reprod Med Biol. 2023 Aug 26;22(1):e12533. doi: 10.1002/rmb2.12533. 

論文内容

ボローニャ基準を満たした卵巣刺激低反応患者において、貯胚が累積出生率と生児出生までの期間に及ぼす影響を評価することを目的としたレトロスペクティブコホート研究です。
ボローニャ基準を満たした276名を主治医・患者の判断や意思決定により、貯胚を行う群(n=121:最大5個の凍結胚まで)と行わない群(n=155)に分けました。24ヵ月の追跡期間中に、2群でそれぞれ656回と405回の卵巣刺激周期を行いました。 

結果 

生化学妊娠率、臨床妊娠率、継続妊娠率、移植あたりの出生率は両群間で差はありませんでした(p>0.05)。累積出生率は貯胚群で非貯胚群より有意に低くなりました(31.4%(38/121)vs. 43.2%(67/151)、p<0.05)。生児出生までの期間は貯胚群で長くなりました(20.5ヵ月 vs. 16.0ヵ月、p < 0.001)。Kaplan-Meier解析では、累積出生率は、非貯胚群と比較して貯胚群で低くなりました(Log rank test, chi-square = 21.958, p < 0.001)。 

私見

2年の治療のなかで、貯胚群と非貯胚群の採卵回数の割合です。また患者は平均39歳前後のAMH 0.4-0.7ng/mLのデータですので、参考になりますね。 

 貯胚群 非貯胚群 
第1周期 2 (1.6%) 44(27.9%) 
第2周期 13(11.6%) 40(25.3%) 
第3周期 20(15.9%) 30(19.4%) 
第4周期 19(15.8%) 25(16.2%) 
第5周期 20(16.6%) 14(9%) 
第6周期 14(10.8%) n=1 
第7周期 10(8.3%) n=1 
第8周期 9(7.5%) n=0 
第9周期 5(4.1%) n=1 
第10周期以上 10(8.3%) n=0 

卵巣刺激低反応にはBologna(ボローニャ) 基準とPOSEIDON基準があります。ボローニャ基準は下記を参考にしてください。 

卵巣刺激低反応患者の新しい層別化基準:Bologna基準からPOSEIDON基準へ(Fertil Steril. 2016; Hum Reprod. 2011) 

Bologna(ボローニャ) 基準
Ferraretti AP, et al : ESHRE consensus on the definition of ‘poor response’ to ovarian stimulation for in vitro fertilization: the Bologna criteria. Hum Reprod. 2011 ; 26 : 1616-24. 

POSEIDON基準
Alviggi C, et al : A new more detailed stratification of low responders to ovarian stimulation: from a poor ovarian response to a low prognosis concept. Fertil Steril. 2016 ; 105 :1452-3. 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 卵巣刺激

# 出生児予後

# 卵巣予備能、AMH

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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