はじめに
ホルモン調整周期黄体補充前のエストロゲン補充が短いのはどうなのか?という報告は昨日のコラムでとりあげています(HRT周期黄体補充前のエストロゲン補充は7日で十分?(Hum Fertil (Camb). 2023))。
では、エストロゲン補充は長すぎるといけないのでしょうか。正倍数性胚においてホルモン調整周期黄体補充前のエストロゲン補充期間と生殖医療結果・周産期予後を検討した報告をご紹介いたします。
ポイント
ホルモン調整周期黄体補充前のエストロゲン補充期間は臨床結果には関係しなさそうです。ただし、短すぎる・長すぎる補充は症例数も少ないため、適切な投与期間を内膜厚やホルモン状態をみて判断していくことが重要そうです。周産期予後への大きな影響はなさそうですが、今後も注視していく必要がありそうです。
引用文献
Lucky Sekhon, et al. Fertil Steril. 2019 Jun;111(6):1177-1185.e3. doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.02.024.
論文内容
正倍数性胚を移植する際のホルモン調整周期黄体補充前のエストロゲン補充期間が臨床転帰に影響するかどうか自己卵子を用いた体外受精治療を行った1,439組で検討したレトロスペクティブコホート研究です。主要評価項目は出生率であり、副次評価項目は着床率、臨床妊娠率、妊娠初期流産、出生体重、低出生体重児割合、分娩時週数、早産率などとしました。
結果
ホルモン調整周期黄体補充前のエストロゲン補充期間(平均17.5±2.9日;範囲:10~36日)は、着床(OR 0.99;95%CI、0.95~1.03)、臨床妊娠(OR 0.98;95%CI、0.94~1.01)、妊娠初期流産(OR 1.03;95%CI、0.95~1.12)、出生(OR 0.99;95%CI、0.95~1.03)に影響を及ぼしませんでした。エストロゲン補充期間は、出生体重(β=-10.65±8.91g)や低出生体重児オッズ(OR 0.87;95%CI、0.68-1.13)にも影響しませんでした。エストロゲン補充期間が1日増えるごとに、分娩時週数の減少が観察されましたが(β=-10.07±0.03週)、早産オッズには影響しませんでした(OR 1.05;95%CI、0.95-1.17)。
私見
エストロゲン補充期間が長いと臨床成績が低下する可能性を示唆した報告が散見します。個人的にはエストロゲン補充期間は長すぎず短すぎないのが良いのだと思います。
* エストロゲン補充が20日以上だと臨床妊娠率(25.6% vs. 16.7%, P=0.037)が低下したが、GnRHアゴニストによるダウンレギュレーションを実施していると成績が落ちなかった(32.6% vs. 31.9%、P=0.825)という400症例での報告
Sunkara SK, et al. DOI:https://doi.org/10.1016/j.fertnstert.2011.07.163
* エストロゲン補充が28日以上だと出生率が低下したという1,377症例でのレトロスペクティブコホート研究
29-35日:OR = 0.66;95% CI [0.46-0.95]; P = 0.026
36-48日:OR = 0.49;95% CI [0.27-0.89]; P = 0.018
Bourdon M, et al. Hum Reprod 2018;33:905–13.
文責:川井清考(WFC group CEO)
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