治療予後・その他

2024.03.29

自然妊娠・体外受精のMD twinリスクの差(J Clin Med. 2023)

はじめに

体外受精は一卵性双胎の発生率を自然妊娠の1/250から1/50に増加させることが報告されています(Knopman J.M, et al.  Fertil Steril. 2014;102:82–89. 
Couck I, et al. Ultrasound Obs. Gynecol. 2020;56:831–836.)。胚盤胞培養・アシステッドハッチングが特に一卵性双胎リスクとされています。自然妊娠と体外受精妊娠の一卵性双胎を比較した時の周産期合併症に差があるかどうかを調査した報告をご紹介いたします。 

ポイント

体外受精MD twin妊婦は自然妊娠MD twin妊婦より妊娠糖尿病を発症する可能性が高くなりますが、その他の妊娠合併症、分娩様式、新生児転帰に関しては差を認めませんでした。

引用文献

Alicia Martínez-Varea, et al. J Clin Med. 2023 Sep 21;12(18):6097.  doi: 10.3390/jcm12186097. 

論文内容

自然妊娠と体外受精により妊娠した一絨毛膜二羊膜双胎(MD twin)の周産期転帰を比較することを目的としました。2015年から2021年にLa Fe University and Polytechnic HospitalでMD twinと診断され、分娩に至った症例を対象としたレトロスペクティブコホート研究です。

結果

MD twin 184症例のうち、149症例(81%)が自然妊娠、35例(19%)が体外受精妊娠でした。体外受精妊娠のMD twin患者では、母体年齢が高く(38.0[35.5-42.5] vs. 32.0[29.0-36.0]、p<0.001)、未分娩率が高くありました(80.0% vs. 50.3%、p=0.001)。妊娠合併症に関しては、妊娠糖尿病(22.9% vs. 2.7%、p<0.001)、妊娠高血圧症候群(22.9% vs. 9.4%、p=0.04)、切迫早産や前期破水(14.3% vs. 36.2%、p=0.015)などの妊娠合併症率が、体外受精MD twin妊婦は自然妊娠MD twin妊婦よりも高くなりました。双胎間輸血症候群の発生率(20% vs. 33.6%、p = 0.155)に差は認められませんでした。交絡因子で調整すると、体外受精MD twin妊婦は自然妊娠MD twin妊婦より妊娠糖尿病を発症する可能性が高いだけであった(aOR 7.86、95%CI 1.55-39.87)。新生児転帰について群間差はみられませんでした。  

私見

MD twinはさまざまな周産期リスク上昇がありますが、体外受精と自然妊娠では多く変わらないという見解が最近多い印象を受けます。  

体外受精MD twin妊婦は自然妊娠MD twin妊婦より妊娠糖尿病を発症率が高く、分娩週数、分娩様式、新生児転帰に関しては差を認めていないという同様のレトロスペクティブコホート研究があります。  
Prats P, et al. AJOG Glob. Rep. 2022;2:100129. doi: 10.1016/j.xagr.2022.100129.  

妊娠高血圧症候群、早産、IUFD、SGAに関して、自然妊娠MD twinと体外受精MD twinで差がないというメタアナリシスもあります。
Wang M, et al. Front. Pediatr. 2022;10:962190. doi: 10.3389/fped.2022.962190.  

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 多胎

# 妊娠高血圧症候群

# 周産期合併症

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

母乳を通じたSSRI曝露と小児の認知機能(JAMA Network Open. 2025)

2026.01.07

帝王切開既往と出産回数が子宮破裂リスクに与える影響(Am J Obstet Gynecol. 2025)

2026.01.06

妊娠期ビタミンD補充による子どもの骨密度長期改善効果:MAVIDOS研究の追跡調査(Am J Clin Nutr. 2024)

2026.01.05

妊娠中ビタミンD補充が新生児骨健康に及ぼす影響:MAVIDOS研究(Lancet Diabetes Endocrinol. 2016)

2025.12.29

治療予後・その他の人気記事

帝王切開既往と出産回数が子宮破裂リスクに与える影響(Am J Obstet Gynecol. 2025)

自然妊娠と体外受精妊娠、どっちが流産多いの?

妊娠高血圧腎症予防のアスピリン投与について(AJOG2023 Clinical Opinion)

妊娠中メトホルミン使用は児神経予後と関連しない(Am J Obstet Gynecol. 2024)

2022.03.01

子宮動脈塞栓術(UAE)後の妊娠は危険?(Am J Obstet Gynecol. 2021)

今月の人気記事

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

高年齢の不妊治療で注目されるPGT-A(2025年日本の細則改訂について)

2025.11.10

我が国の統計からの興味深い情報のご紹介~男性は何歳まで子供を作ることができるのか~

2023.06.03

PCOS女性の妊娠前・初期メトホルミンが妊娠転帰に与える影響(Am J Obstet Gynecol. 2025)

2025.12.22