はじめに
ビタミンD受容体は、卵母細胞、顆粒膜細胞、子宮内膜、胎盤など、生殖に関わるいくつかの組織で発現しており、ステロイド形成、卵胞形成、着床において、ビタミンDが関与している可能性が示唆されています。
E. Lerchbaum, et al. Eur J Endocrinol, 166 (2012), pp. 765-778
M. Lorenzen, et al. Mol Cell Endocrinol, 453 (2017), pp. 103-112
ビタミンDと卵巣予備能との関連論文は10本以上報告されていて、意見が分かれています。今回は、Study of Environment, Lifestyle, and Fibroids(SELF)という子宮筋腫を評価するためにデザインされたデトロイトで行われた前向きコホート研究の二次解析で検討している論文をご紹介します。
ポイント
卵巣予備能が低い方はビタミンD濃度を気にしてもよいかもしれません。
引用文献
Anita Subramanian, et al. Fertil Steril. 2024 Apr;121(4):642-650. doi: 10.1016/j.fertnstert.2023.12.023.
論文内容
血清25-ヒドロキシビタミンD値:25(OH)DとAMHを用いた卵巣予備能の関連を比較検討したミシガン州デトロイト地域で行われた横断研究です。
23~35歳で、PCOSを除く黒人またはアフリカ系アメリカ人女性の前向きコホートから1,593名のデータを取得しました。評価項目は25(OH)Dと血清AMH値との関連としました。カテゴリー別25(OH)D値(<12、12-20、20-30、>30 ng/mL)と連続自然対数変換AMH値との関連を検討しました。25(OH)D値とAMH高値(上位10パーセンタイル:>7.8ng/mL)または低値(<0.7ng/mL)との関連をロジスティック回帰で推定しました。モデルは年齢、BMI、OCP使用、喫煙、運動習慣で調整しました。
結果
25(OH)D値は低く、参加者の70%が20ng/mL以下でした。25(OH)D値が12ng/mL未満の群と比較して、12-20、20-30、>30ng/mLの群では、AMH値がそれぞれ7%(95%CI:4-20)、7%(95%CI:6-22)、11%(95%CI:7-34)高くなり、オッズ比も低くなりました(0.63; 95%CI:0.40-0.99、0.60; 95%CI:0.34-1.07、0.76; 95%CI:0.35-1.65)。月経不順またはAMH値が非常に高い(>25ng/mL)参加者を除外しても、関連は変わりませんでした。
私見
私たちも日本人女性2,065名のビタミンDと様々なパラメータの比較を報告しています。その結果は以下の通りでした。
- ビタミンD濃度が十分であった女性は6.5%に過ぎませんでした。
- ビタミンD濃度は季節によって差があり、冬季には低くなりました。
- ビタミンD濃度と卵巣予備能には関係を認めませんでした。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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