治療予後・その他

2024.06.03

培養期間とLGAとの関連(Fertil Steril. 2024)

はじめに

在胎不当過大児(Large for gestational age(LGA))は、出生時の体格が在胎期間に比してかなり大きい児をさします。培養期間とLGAとの関連をビッグデータで解析した結果をご紹介いたします。

ポイント

凍結融解胚移植周期において胚の培養期間(凍結時期)が長くなるほど、LGA児は増えそうです。

引用文献

Bruce D Pier, et al. Fertil Steril. 2024 May;121(5):814-823.  doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.01.002. 
Bruce D Pier, et al. Fertil Steril. 2024 May;121(5):814-823.  doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.01.002.    

論文内容

受精後2~7日目に凍結保存し、凍結融解胚移植を受けた女性において、胚凍結保存日と単胎LGA児との関係を検討したSARTデータベースと用いたレトロスペクティブコホート研究です。  

結果

2014年から2019年の間に凍結融解胚移植で出生した181,592周期のうち33,030(18.2%)がLGA児でした。凍結保存が2日目(13.7%)から3~7日目(14.4%、15.0%、18.2%、18.5%、18.9%)に行われた場合、LGA児リスクの増加が認められました。対数二項モデルでは、5~7日目に凍結保存を行った場合、2~3日目を合わせた場合に比べてリスクが増加しました(5日目:aRR 1.32、95%CI 1.22-1.44、6日目:aRR 1.34、95%CI 1.23-1.46、7日目:aRR 1.42、95%CI 1.25-1.61)。対数二項モデルにおいてLGAリスクと最も関連した他の因子は、0回と比較して3回以上の早産(aRR 1.82、95%CI 1.24-2.69)および正常体重と比較してBMI 35以上(aRR 1.94、95%CI 1.88-2.01)でした。このモデルでは、経妊数、経分娩数、BMI、卵子数、胚のグレードもLGAと関連していました。アジア人、黒人、ヒスパニック、および太平洋諸島民族は、白人患者と比較してモデルにおいてprotective factorでした。低BMI(<18.5)もまた、正常BMIと比較してprotective factorと考えられました  

私見

培養中の胚のエピジェネティックな変化、培養液の種類、暴露期間、および黄体の有無、外因性エストロゲンとプロゲステロンの使用がLGAと関連しているかもという報告はありますが一定の見解には至っていません。生児出生を増加するためにでてきた新たな解決すべき課題ですが、現在 中長期的な児への有害事象は認めていないため、あまりナーバスになりすぎる事案ではないと感じています。 

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 培養液

# 出生児予後

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

男性不妊と女性不妊におけるART妊娠の周産期予後の違い(Fertil Steril. 2025)

2025.09.08

妊娠前メトホルミンによる重症妊娠悪阻リスクの低下(Am J Obstet Gynecol. 2025)

2025.08.19

妊娠中期頚管短縮に対するプロゲステロン腟剤の周産期予後改善効果(Am J Obstet Gynecol. 2025)

2025.08.18

ART妊娠親子の心理的転帰:システマティックレビュー・メタアナリシス(J Assist Reprod Genet. 2025)

2025.07.29

高齢化における生殖補助医療の倫理的考慮:Ethics Committee opinion(Fertil Steril. 2025)

2025.07.25

治療予後・その他の人気記事

男性不妊と女性不妊におけるART妊娠の周産期予後の違い(Fertil Steril. 2025)

妊娠中メトホルミン使用は児神経予後と関連しない(Am J Obstet Gynecol. 2024)

非前置胎盤性癒着胎盤のリスク因子(Reprod Med Biol. 2024)

妊娠周辺期HbA1c高値と児の先天性心疾患(Hum Reprod. 2024)

妊娠初期PEスクリーニングの早産との関連(Am J Obstet Gynecol. 2024)

がん患者の妊孕性保存 ASCOガイドラインアップデート2025(J Clin Oncol. 2025)

今月の人気記事

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

2025.09.02

挙児希望男性の初回精液検査・精子DNA断片化率・精液酸化還元電位の異常頻度(日本受精着床学会雑誌. 2024)

2025.09.02

2025.09.03

レトロゾール周期人工授精における排卵誘発時至適卵胞サイズ(Fertil Steril. 2025)

2025.09.03

男性不妊と女性不妊におけるART妊娠の周産期予後の違い(Fertil Steril. 2025)

2025.09.08

PGT-Aによる体外受精での出産までの期間への影響(Fertil Steril. 2025)

2025.09.09

レスベラトロールにおける生殖機能への影響

2024.10.15