はじめに
反復着床不全(RIF)の原因として、子宮内膜ポリープ、粘膜下筋腫、子宮腔内癒着、子宮内膜症、受精胚異数性などの修正可能な要因が挙げられます。RIF原因を調べる検査のひとつとして、子宮内膜のゲノム発現を用いて個別化された移植時期を特定し、受精胚と子宮内膜の同期を最適化を目指したIgenomix社による子宮内膜胚受容能検査(ERA)があります。臨床的に有用な検査であるためには、同一患者において再現性があることが理想的です。では、再現性はどの程度担保されるのでしょうか。
ポイント
ERA検査結果は、一定の状況下では一貫性が欠如することがわかっています。
内容
①ERA検査を7名の検者で三年間の間隔をあけて内膜の窓を確認したところ、検査結果は一致した
Díaz-Gimeno P ら:Fertil Steril. 2013
②内膜症の存在でも内膜の窓のずれのリスク因子とはならない。
Juan A Garcia-Velascoら:Reprod Biomed Online. 2015
③腺筋症では内膜の窓のずれのリスク因子となる。
Nalini Mahajanら:J Hum Reprod Sci.2018
④閉経後の同じ患者でERA検査を4回やったら3回検査が異なった。

Cho Kら:J Assist Reprod Genet. 2018
Cho Kらの報告は最初に一貫性の欠如を示したもので以下が内容となります。
この報告は、44歳の健康な閉経後女性の症例です。この患者は2個の高品質ドナー卵子胚盤胞の移植に失敗しました。一般的なRIF原因がすべて除外した後、ERA検査が実施されました。エストラジオール 2mgを1日3回10日間経口投与した後、生検時まで腟用エンドメトリン100mgを1日3回投与しました。患者は4か月間に合計4回のERA検査を受けました。
最初の3回のERA検査において、着床ウィンドウに著しい変動が認められ、いずれも着床ウィンドウの時間枠が重複していませんでした。この一貫性の欠如は、検査の3時間の誤差を考慮しても存在していました。この期間中、患者の体重に変化はなく、すべての生検は同じモデルのピペットを用いて実施されました。1回目の検査ではプロゲステロン補充106時間後の生検で「pre-receptive」と判定され、次回は154±3時間での生検が推奨されました。2回目の検査では194時間後に「post receptive」と判定され、170±3時間での生検が推奨されました。3回目の検査では170時間後に再び「post receptive 」と判定され、146±3時間での受精胚移植が推奨されました。4回目の検査では148時間後に「receptive」と判定され、148±3時間での受精胚移植が推奨されました。
私見
ERA検査の初期の開発研究では、卵子ドナーから採取した79個の子宮内膜サンプルを用いてモデルが構築され、49サンプルが再評価されました(Díaz-Gimeno P, et al. Fertil Steril. 2013;99:508-17)。さらに、これらのうち7サンプルについて、平均3年後の同じ周期日に採取された反復子宮内膜生検と比較したところ、以前のサンプルと同一の子宮内膜胚受容能分類が得られたとされています(①であげた報告です)。しかし、このサンプルサイズは小さく、一定の例外はあるかと考えています。我々も、慢性子宮内膜炎存在下にERA検査の一貫性の欠如をみとめた症例報告を報告しています。
文責:川井清考(WFC group CEO)
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