一般不妊

2024.12.10

子宮内膜症/子宮腺筋症女性の子宮収縮(Fertil Steril. 2024)

はじめに

子宮内膜症や子宮腺筋症のある非妊娠女性における子宮収縮力異常が月経困難症、不妊(精子の移送、着床時期の妨げなど)などの原因と考えられています。子宮蠕動運動については、測定も一貫しておらず、まだ十分な研究がなされていないのが実情です。
子宮内膜症/子宮腺筋症女性の子宮収縮のメタアナリシスをご紹介いたします。質が高い研究が少なく、不均一な結果ではありますが大凡のイメージをつかみやすい報告となっています。

ポイント

子宮内膜症または子宮腺筋症の女性では、月経周期のすべての時期にわたって収縮振幅が大きくなりました。子宮収縮頻度は内膜症では高くなっている傾向がありました。

引用文献

Noemi Salmeri, et al. Fertil Steril. 2024 Dec;122(6):1063-1078. doi: 10.1016/j.fertnstert.2024.07.026.

論文内容

子宮内膜症および子宮腺筋症女性における月経周期の各相にわたる子宮収縮力に関するエビデンスを検証することを目的としたシステマティックレビュー・メタアナリシスです。PubMed/MEDLINE、Embase、Scopusのデータベースを2024年5月2日まで検索しました。子宮内膜症/子宮腺筋症の女性と対照群で、異なる月経周期期にわたって、MRI、超音波、電気生理学的検査、または直接子宮内圧記録を用いた子宮収縮力の定量的測定を行った報告を対象とし、研究の質はNewcastle-Ottawa Scaleを用いて評価しました。評価項目は逆行性子宮収縮パターン、すべての月経周期期にわたる子宮収縮力の連続測定値(収縮の頻度、振幅、速度)としました。

結果

9件の研究が組み入れ基準を満たしました。月経中の逆行性子宮収縮のリスク増加(約9倍)が、対照群と比較して子宮内膜症女性で観察されました(リスク比、8.63;95%CI、3.24-22.95)。子宮内膜症/子宮腺筋症群では、すべての時期で収縮振幅が高いことが報告されました。特に子宮腺筋症についてはデータが少ないため、ほとんどの比較についてエビデンスの確実性は低いと評価されました。内膜症単独でみると、子宮収縮頻度が増加する傾向の結果となりました。 

子宮内膜症と対照群の収縮頻度のプールMD 
– 月経期0.82(95%CI、0.13-1.52) 
– 排卵前期-0.13(95%CI、-1.75-1.48) 
– 黄体期0.52(95%CI、0.22-0.83) 

子宮内膜症/子宮腺筋症群と対照群の収縮頻度のプールMD 
– 月経期0.45(95%CI、-0.24-1.15) 
– 増殖期-0.15(95%CI、-0.29-0.00) 
– 排卵前期-0.15(95%CI、-0.84-0.54) 
– 黄体期0.27(95%CI、-0.23-0.77) 

私見

静脈内投与(アトシバン)、皮下投与(バルシバン)、経口投与(ノラシバン)の胚移植成績改善は、コクラン・レビュー2021ではアトシバンだけ若干良いコメントが残されるものの現在の研究では成績改善には疑問点が残るとしています。

Laurentiu Craciunas, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2021 Sep 1;9(9):CD012375. doi: 10.1002/14651858.CD012375.pub2.

子宮収縮頻度が増えそうな症例に絞ったRCTなどが増えてくると結論が変わるのでは?というstudy questionは以前からあるので今後の報告に期待したいと思います。
国内では、どの製剤も使用することができないため、ダクチルなどの代替製剤を検討されることがあります。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 月経困難症

# 子宮内膜症

# 子宮筋腫、子宮腺筋症

# 総説、RCT、メタアナリシス

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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