一般不妊

2025.08.05

腹腔鏡下子宮筋腫核出術における子宮動脈結紮の卵巣予備能への影響(Hum Reprod. 2025)

はじめに

子宮筋腫は生殖年齢女性の最も一般的な良性腫瘍であり、症状のある女性で将来の妊娠を希望する場合、不妊原因や出産時リスクを考えられる場合、腹腔鏡下子宮筋腫核出術が標準治療となっています。術中出血制御のために一時的または永続的な子宮動脈閉塞が行われることがありますが、卵巣予備能マーカーへの影響については不明な点が多く残されていました。今回、術中に予防的永続的子宮動脈閉塞が卵巣予備能に与える短期・長期的影響について、2年間の追跡調査による初めてのランダム化比較試験の結果が報告されましたのでご紹介いたします。

ポイント

腹腔鏡下子宮筋腫核出術における予防的子宮動脈閉塞は術中出血量を有意に減少させ、短期・長期ともにAMH値に影響を与えないことが示されました。

引用文献

I Streuli, et al. Hum Reprod. 2025 Jul 1;40(7):1305-1314. doi: 10.1093/humrep/deaf070.

論文内容

腹腔鏡下子宮筋腫核出術において、永続的子宮動脈閉塞が生殖年齢女性の卵巣予備能マーカーに短期または長期的影響を与えるかを検討することを目的としたランダム化比較試験です。2015年7月から2021年10月の間に、症状のあるFIGO 3-6型子宮筋腫を有し腹腔鏡下子宮筋腫核出術が予定された58名の女性を対象とし、2年間の追跡調査を行いました。

患者は両側子宮動脈閉塞群(予防的子宮動脈閉塞を伴う腹腔鏡下子宮筋腫核出術、29名)と非閉塞群(子宮動脈閉塞なしで子宮筋層内血管収縮薬注射を行う腹腔鏡下子宮筋腫核出術、29名)に無作為に割り付けられました。血清AMH値と超音波による前胞状卵胞数(AFC)を術前(T0)と術後1か月(T1)、3か月(T3)、6か月(T6)、12か月(T12)、24か月(T24)に評価しました。

結果

両群間で年齢、BMI、民族、妊娠歴、妊娠希望、ホルモン治療、子宮筋腫の数と大きさ、術前ヘモグロビン値、子宮出血症状、術前血清AMH値、AFCに差は認められませんでした。平均手術時間は両群間で差がありませんでした。術中出血量は子宮動脈閉塞群で平均138(±104)ml、対照群で436(±498)mlと有意に少なく(P<0.001)、閉塞群では術中出血量500ml以上の症例は0%でしたが、非閉塞群では32.1%でした(P<0.01)。血清AMH値は全ての時点(T1、T3、T6、T12、T24)で両群間に差はなく、非劣性マージン(-3.5 pmol/l)を用いた解析で予防的閉塞の非劣性が証明されました。AFCについても両群間で差は認められませんでしたが、測定値のばらつきが大きく非劣性は証明されませんでした。

私見

Abstractでは記載はあまりされていませんが、本研究では子宮動脈閉塞術後の妊娠に関する安全性が詳細に評価されています。2年間の追跡期間中、10例の自然妊娠が発生し、そのうち8例が正期産での生児獲得に至りました(子宮動脈閉塞群3例、対照群5例、群間差なし P=0.49)。分娩方法は経腟分娩3例、帝王切開5例で、帝王切開の理由は前置胎盤1例のみであり、子宮動脈閉塞に関連した合併症ではありませんでした。

術後の子宮機能回復については、側副血行路と血管吻合により健常子宮組織の血管新生が速やかに起こることが説明されています。術後3か月に経腟超音波で子宮瘢痕の状態を評価し、筋腫の部位・大きさ・縫合層数・エネルギーデバイスの使用・子宮腔の開放・術後感染などのリスク因子に応じて、個別化された妊娠計画を立てているようです。また、月経過多や月経困難症などの症状も両群とも術後24か月で有意に改善し、子宮筋腫の再発率にも差は認められませんでした。これらの結果から、適切に実施された予防的子宮動脈閉塞は、将来の妊娠・分娩に悪影響を与えない安全な手技と考えられます。もちろん、症例数が少ない検討ですし、患者背景が36歳 AMH 1-2ng/mLですので卵巣状態がそこまで悪くないことが前提条件での検証となっています。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# 手術

# 子宮筋腫、子宮腺筋症

# 卵巣予備能、AMH

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

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