治療予後・その他

2025.12.16

腟内プロゲステロン投与の6-9歳時点での心理的・認知的プロファイルへの影響(Am J Obstet Gynecol. 2025)

はじめに

腟内プロゲステロンの児への長期的影響については不明でした。今回、双絨毛膜双胎に対する妊娠中の腟内プロゲステロン投与が、児の6-9歳時点での心理発達と認知機能に与える影響を検討したフォローアップ研究をご紹介します。

ポイント

双胎妊娠における腟内プロゲステロン投与(200mg/日・400mg/日)の長期投与は、6-9歳時点での児の心理的・認知的発達に有害な影響を与えませんでした。

引用文献

Perales A, et al. Am J Obstet Gynecol. 2025;233:313.e1-12. doi: 10.1016/j.ajog.2025.04.056.

論文内容

双絨毛膜双胎妊娠において妊娠20週から34週まで(または分娩まで)腟内プロゲステロン(200mgまたは400mg/日)の投与を受けた母親から生まれた生存児206名を対象とした多施設共同二重盲検ランダム化比較試験のフォローアップ研究です。参加者は腟内プロゲステロン200mg/日群75名、400mg/日群63名、プラセボ群68名でした。
6-18歳用子ども行動チェックリスト(CBCL/6-18)と非言語性知能評価のためのレーベン色彩累進マトリックステスト(RCPM)を用いて、6-9歳時点での行動・情緒的問題および認知機能を評価しました。母親、質問票収集者、データベース管理者は全て原試験での介入内容についてブラインド化されていました。

結果

CBCL/6-18で評価した11の精神病理学的症候群尺度の平均スコアにおいて、腟内プロゲステロン200mg/日群、400mg/日群、およびこれらを統合した群とプラセボ群との間に有意差は認められませんでした(すべてP値 >.05)。CBCL総スコアの平均値も、腟内プロゲステロン200mg/日群(31.08±22.58)、400mg/日群(37.48±28.59)、統合群(34.00±25.60)とプラセボ群(34.60±25.55)の間に有意差はありませんでした(それぞれP=0.38、0.54、0.87)。
Raven’s検査の平均パーセンタイルは、腟内プロゲステロン200mg/日群(63.11±27.03)および400mg/日群(60.40±31.51)でプラセボ群(59.40±30.64)よりもわずかに高値でしたが、統計学的有意差はありませんでした(それぞれP=0.44、0.85)。性別による解析でも、腟内プロゲステロン群とプラセボ群の間で精神病理学的症候群尺度、CBCL総スコア、Raven’s検査の平均パーセンタイルに有意差は認められませんでした。

私見

この研究の元となった試験(Serra V, et al. BJOG, 2013)では、腟内プロゲステロン投与群とプラセボ群の間で早産率や周産期有害転帰に有意差がなく、早産予防効果は認められませんでした。
3-6歳時点での先行研究では、McNamara et al.(PLoS One, 2015)のSTOPPIT研究のフォローアップで発達転帰に有意差がないことが報告されています。
Vedel et al.(Ultrasound Obstet Gynecol, 2016)のPREDICT研究では、双絨毛膜双胎において腟内プロゲステロン群で神経生理学的転帰が良好で、低ASQスコアのリスクが有意に低下する可能性が示されていました(OR 0.34; 95% CI 0.14-0.86)が、今回の研究ではそのような優位性はなかったことになります。ただ、私個人としては長期的に腟内プロゲステロンを使っても児予後に影響をあたえないことがわかっただけでも収穫あり、安心材料です。

文責:川井清考(WFC group CEO)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのコラムです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。当コラム内のテキスト、画像、グラフなどの無断転載・無断使用はご遠慮ください。

# プロゲステロン/プロゲスチン

# 中長期予後

# 影響する薬剤など

# 心理的素因

WFC group CEO

川井 清考

WFCグループCEO・亀田IVFクリニック幕張院長。生殖医療専門医・不育症認定医。2019年より妊活コラムを通じ、最新の知見とエビデンスに基づく情報を多角的に発信している。

この記事をシェアする

あわせて読みたい記事

母乳を通じたSSRI曝露と小児の認知機能(JAMA Network Open. 2025)

2026.01.07

帝王切開既往と出産回数が子宮破裂リスクに与える影響(Am J Obstet Gynecol. 2025)

2026.01.06

妊娠期ビタミンD補充による子どもの骨密度長期改善効果:MAVIDOS研究の追跡調査(Am J Clin Nutr. 2024)

2026.01.05

妊娠中ビタミンD補充が新生児骨健康に及ぼす影響:MAVIDOS研究(Lancet Diabetes Endocrinol. 2016)

2025.12.29

治療予後・その他の人気記事

妊娠高血圧腎症予防のアスピリン投与について(AJOG2023 Clinical Opinion)

自然妊娠と体外受精妊娠、どっちが流産多いの?

反復着床不全・反復流産におけるタクロリムス治療の周産期予後(Am J Reprod Immunol. 2019)

妊娠中メトホルミン使用は児神経予後と関連しない(Am J Obstet Gynecol. 2024)

帝王切開既往と出産回数が子宮破裂リスクに与える影響(Am J Obstet Gynecol. 2025)

今月の人気記事

胎児心拍が確認できてからの流産率は? 

2021.09.13

2023年ARTデータブックまとめ(日本産科婦人科学会)

2025.09.01

高年齢の不妊治療で注目されるPGT-A(2025年日本の細則改訂について)

2025.11.10

我が国の統計からの興味深い情報のご紹介~男性は何歳まで子供を作ることができるのか~

2023.06.03

自然周期採卵における採卵時適正卵胞サイズ(Frontiers in Endocrinology. 2022)

2025.03.25